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出光佐三

2013年11月30日 (土) 23:29
出光佐三

出光佐三
八、石統との戦い
「政府はこの期に及んで、まだ業界を統制することしか頭にない。石油業界の未来や日本の将来のことなど何も考えておらん」

「これがアメリカのすごいところだ。利用価値があるとわかれば即座に決める。日本はこうはいかない。おそらくアメリカは古い利権構造をぶっ壊してしまいたいのだろう」
「しかし油断してはならない。アメリカは日本の石油市場を支配したいという目論見をもっている」

体裁だけは新しくしていたものの、機構と人員は旧石統をそっくり残した形になった。
「まだこんなことを繰り返しているのか。商工省の役人の頭はどうかしている」

「日本は石油のために戦争をし、石油のために敗れた。尊い犠牲を払って得た教訓を、今もなお政府も石油業界もわかっていないというのは、どういうことなんだ」

「残念なのは、それを生み出すのに、GHQ の助けを借りることだ」

「この事業は国岡商店だけのものではない。日本の石油産業の未来がかかっている」

九、武知甲太郎(たけちこうたろう)
「日本はコネクションが大きな力を持つらしいですよ」
「利益よりもか」
「この国では、コネこそが利益なんですよ」
日本語で言うところの「腐れ縁」

「日本という国は、和を乱すと、除け者にされてしまう風土がある」
「よく知ってるな。村八分と言うんだ」
「アメリカにはない風習です」
アメリカにはたしかに「村八分」はないが、その代わり苛烈な人種差別がある。

「驚くべきことは、終戦後、中国にあった国岡商店の営業所は、雇っていた中国人たちへ退職金を支払っていることだ。こんな会社はほとんどない」

「無実が晴れただけだ」

店主は違う。統治はされていても、精神的には常に対等であった。

十、スタンバック
今は占領下にあり、羊のようにおとなしい国民だが、ひとたび牙を剥けば、あのカミカゼアタックのように、命を懸けて戦ってくる恐ろしい国民なのた。そうならないように日本人の牙と爪をすべて抜いてしまうというのが、GHQ の使命のひとつでもあった。

「お前は終戦後、仕事が何もないにもかかわらず、社員の首を切らなかった。そして彼らに仕事を与えるために、農業や漁業や電機屋までやったそうじゃないか」

「うちがスタンバックの油を売ってもいいのか?」
喉から手が出るほど欲しい特約店契約であったが、鐡造は断った。

しかし旧石統のメンバーは狡猾だった。総裁と副総裁以外の幹部クラスや従業員のほとんどは旧石統の社員たちが占めた。

十一、逆転
「国岡商店をどうしますか?」
「あれに大暴れされるとかないませんな」
「国岡の連中は働きすぎます」
「まあでも、彼らがやってくれたおかげで、GHQ の石油政策が少し甘くなったのですから、国岡商店には感謝しないと」
「感謝はしても、仲間にはしたくないですな…とにかく国岡は指定業者から外れてもらいたい」

「内地に本社を有したる引揚業者は認めない」

「…口外は差し控えていただきたい」

日本という国の悪いところだ。いや官僚の悪いところだ。彼らは国全体の利益を見ようとはけっしてしない。常に目先の利、狭い集団の利益ばかりを追求する。思えば、自分が属した日本陸軍もそうだった。本当の敵である連合軍を前にして、海軍とのつまらぬ利権争いにどれだけ無駄な精力を注ぎ込んだか。

チャン「腐った役人め」
卑怯で、卑屈で、男らしさのかけらもない。ああいう男は、立場が下の者には逆に横柄に振る舞うのだろう。日本の官吏にはあの手の男たちが多い。…日本は武士道の国と聞いていたが、そうではなかった。役人はどいつもこいつも狡猾(ずるがしこ)いネズミみたいな連中だ。

しかし、実はそれは嵐の前の一瞬の静けさにすぎなかった。国岡商店を一撃で葬り去るほどの強大な敵が迫りつつあるのを、このとき、鐡造は知らなかった。
それは、「七人の魔女」とよばれる怪物だった──。


今日の世界が、これだけ交通が発達して時間的に狭くなった以上は、全世界ある いは全人類の平和とか福祉というような、世界全体を対象として考えなくちゃな らないと思うんです。そして、今日の世界全体を考えるときに、いちばん問題に なるのは、対立闘争で行き詰っているということですね。のみならず、そういう 危機状態に入っている。これをそのまま放っておいていいかどうかということな んです。

そこで、それならどうしたら解決がつくかということですが、これがすこぶる簡 単明瞭なんです。お互いに助けあう、仲よくするということでいいんじゃないか と私は思うんですね。

ところで、私の会社が今年五十八年目ですが、一昨年五十五周年を迎えたとき、 出光がここまで発展してきた根本の力はなにかということを考えてみて、結局、 それはみなの「仲よくする力」以外にないということで、この「仲よくする力」 の偉大さを改めて自覚したわけです。

世界の人びとが求めている福祉とはお互いに仲よく助けあうことですから、人間 の働く意味がそこに出てきます。人間は働かなくてはならない。しかも、お互い のために働かなくてはならない。自分のためのみでなく人のために働く、そこに 真の福祉がある。そして人が働くなら能率をあげなきゃならない。この能率をあ げることでは資本主義が最も適している。ただ、資本主義の欠点は資本家の搾取 です。

株主に、投機的な金もうけの考え方を植え付けることがいいことかどうか、疑問 に思います。経営というものはもっと真面目なものであり、金の力は万能ではな い、人の力こそが万能であるということを働く人も株主も認識すべきじゃないで すか。そこに「働く人の資本主義」という考えが出てくるんです。
 


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