一、1951年(昭和26年)の2月8日、戸田先生のもとに、私が選んだ青年の精鋭が集った。 たったの14人。当時はまだ、本当に信頼できる同志 は少なかった。 そして先生のもとで、訓練が開始された。 最初の教材は、革命小説『永遠の都』 (ホール・ ケイン著)。 我らの「永遠の都」をつくるのだ! そうした師の心が込められていた。 『永遠の都』を読め。君の一番信頼している人間にも読ませなさい──こう戸田先生は、事前に私に言われていたのである。 23歳の私は、日記に記した。 「宗教革命の若人十四名、勇躍、師の下に集まる」 「今夜の歴史的会合、実に三時間以上に及ぶ。皆、真剣なり」 「吾人等(ごじんら=我ら)の断行せんとする革命 は、それら(=政治革命や経済革命)より本源的な、 宗教革命なり」 「即ち、真実の平和革命であり、無血革命なり」 厳粛であった。 躍動があった。
人間讃歌を高らかに!
一、 『永遠の都』の主な舞台は、西暦1900年の ローマである。 若き革命家たちが、民衆が、時の暴政に立ち上が る。宗教の権威や政治の権力と、敢然と戦う。 その先頭に立つ一人がロッシイ。学会でいえば、青年部のリーダーである。 革命児たちは、人間共和の理想を掲げる。 本来、人間に、上も下もない。皆、平等だ。我らの 「人間主義」の信条とも共鳴する。 「永遠の都」を目指す若人は、絶対の同志愛で、厳冬のごとき幾多の試練を乗り越え、歓喜が躍動する“勝 利の春”を勝ち開く。そういう物語である。 この本を通して、戸田先生は、学会の真髄の精神を 教えてくださった。本当に偉大な先生であられた。 広宣流布とは、平和と文化と教育の「永遠の都」を つくる大事業である。 正義と幸福の「永遠の都」。 民衆勝利の「永遠の都」。 人間讃歌の「永遠の都」。 生命尊厳の「永遠の都」。 常楽我浄の「永遠の都」。 これらの大建設は、人類が何千年来、求めてきた夢 である。目標である。この偉業を根底から実
現してい るのは、わが創価学会しかない(大拍手)。
“我らは前進! 勝利の日まで”
一、ここで、『永遠の都』から、いくつかの言葉を 紹介したい。〈以下、引用はすべて、新庄哲夫訳『永 遠の都』潮文庫から〉 まず、主人公の革命児ロッシイの言葉である。
「いまほど、未来への強い確信をいだいたことはない。どこへいっても、時代の流れはぼくたちに味方している」
我々の時代を開こう!──これが革命児だ。青年部 の心意気である。 作品に綴られている。
「国家には興亡があるけれど、人間は不滅の存在 だ」
一番大事なのは人間である。国家ではない。ゆえ に、「人間革命」が重要なのである。
ロッシイは言った。 「人間性こそ、この世でもっとも神聖なものです」
この最も神聖な「人間性」を、仏法を持(たも)っ た人は、最高に輝かせていくことができるのだ。
さらに、ロッシイの言葉である。
「道徳に立脚した革命のほかはいかなる革命も永続 しない」
「宗教の名において行なわれた革命は後退すること があっても、勝利をおさめる日がくるまでは絶対に死に絶えない」
一つの真髄ともいえる言葉である。 我らが進める「人間革命」の大運動も、まさにこの 言葉通り、永遠性をもっている。すごいことである。 これ以外に、人間の真の勝利はない。
同志とともに!
一、ロッシイの同志であるブルーノ。彼は、謀略を はねのけ、最後の最後まで友を信じ抜き、
「ロッシイ 万歳!」
と叫び、死んでいった。 心から離れない重要な場面である。 同志を裏切らない。同志を守り抜いて、生涯を全う する。 今の世には、これと反対の人間が多い。自分はいい 子になって、同志を売る──なんと卑劣な姿か。 戸田先生は、本当に深い考えをもって、この本を読 ませてくださった。 私は、戸田先生のご期待通りに行動し、生きてきた つもりである。 このブルーノの最期について、美しき女性ローマは 綴っている。
「欺瞞(ぎまん)に打ち勝った勝利、誘惑に打ち 勝った勝利、嫉妬に打ち勝った勝利、なかでも自分に 打ち勝った勝利の声だったのですわ」
ヒロインであるローマは、こうも語っている。 「わたしにとって、幸せとは苦しみの中にしか見つ からないものですわ」
その通りである。 苦労があるから成長できる。生命の濁りも、信心で 浄化される。
「煩悩即菩提」である。
一、再び、ロッシイの信念を紹介したい。男子青年部の諸君のために。
「こんごどんな事態が発生しようと、そんなことは 少しも意に介さないで、民衆のために一身をささげよう。 自分と、人の世のために尽くすという仕事とのあい だには──たとえどんなことであれ割り込んでくる余 地はないのだ」
そして、ロッシイはこうも綴っている。
「わが身に課した使命をつらぬくにあたって、いつ ふりかかってくるやもしれぬ艱難(かんなん)を受け 止める覚悟ができていなくてはなりません」
また、ある登場人物は語っている。
「山は動かない。しかし、人間は動くようになって いる」
印象深い言葉である。
師弟で築け 永遠の都を
〔23歳の決意〕
「我らの革命は真実の平和革命だ」
〔主人公ロッシィ〕
正義の怒りは困難の壁を打ち破る
「何を読んだ?」
「どんな内容だ」
一、戸田先生は、以前から『永遠の都』を読んでおられた。先生にとって、大事な一書であった。 そして、私を見つけ、「よし、大作、読みなさい」 と薦めてくださったのである。 訓練は、一対一。私は当時、幹部でもなかった。しかし、戸田先生のもとで薫陶を受けさせていただい た。 先生に初めてお会いしたのは19歳。大田区の座談会 でのことであった。 先生との日々は、美しい光景となって、今も私の心 に焼き付いている。 戸田先生はよく、世界の名著に触れて、「大作、い い言葉だな」とおっしゃっておられた。 先生も一緒に読まれた。「どこまで読んだ?」と、 よく聞かれたものである。 会えば、「今、何を読んでいるんだ?」「それは、 どういう内容だ?」と聞かれる。先生の訓練は厳し かった。 ごまかそうにも、嘘は長続きしない(笑い)。1年 365日、油断できない(爆笑)。私の妻も、よく知って いる。 本当に徹底して薫陶していただいた。
一、『永遠の都』には綴られている。 「民衆の敬愛という広い基盤に立った王座は強く、 正しい」 一番大事なのは、民衆である。民衆の上に、大道は 開かれる。民衆よりも大事なものはない。 また、このような一節もあった。
「創始者はつねに殉教者だ」
先頭に立って戦う創始者! 牧口先生も、戸田先生 も、そして私もそうである。 享楽(きょうらく)になど見向きもせず、自分をなげうって戦う。それなのに、悪口を言われる。それ が、殉教者である。 私は、戸田先生の遺志を、寸分も違えることなく、 実現してきた。この一点を断言しておきたい。 歴史を見ても、正義の人がヤキモチを焼かれ、中傷されてきた。 それを見ながら、何もせず、真実を叫ばなければ、 その罪は大きい。 ロッシイは、強い信念をもっていた。
「殉教にはなんという力があるのだろう! 古代 ローマの皇帝たち、貴婦人、宮廷人はいまいずこ? ただのほこりと灰にすぎないではないか。ところが、 殉教者はいまの世にも生きつづけているのだ!」
虚栄の人間がなんだ。殉教者こそ、最も尊いではな いか──と。 ロッシイの言葉には、こうある。
「正義の精神にのっとった大きな憤りは、人種や国家間のあらゆる障害をうちこわしたのだ」 壁を壊せ。新しいものをつくれ! 真実の正義の精神、正義の人間性でいけ! この心で進もう。ロッシイのごとき、革命児となっ て! 〈会場から「ハイ!」と力強い返事が〉
若者に栄(さかえ)あれ