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総合主義と帰属主義

2013年11月11日 (月) 17:04
総合主義と帰属主義

レポート:「総合主義と帰属主義」
税理2013年10月号
国際課税のゼミナール
前明治大学大学院教授 川田 剛先生

「総合主義」と「帰属主義」の問題は、昭和36年から折に触れて議論されてきたテーマである。

1.総合主義と帰属主義の相違点
Q:
国際課税には「総合主義」と「帰属主義」という考え方があるようですが、どのように違うのでしょうか。

A:
「総合主義」とは、国内に恒久的施設があれば、事業所得だけでなく、国内源泉所得から生じる他の所得についても、「通常課税」すべしという考え方です。

それに対し、「帰属主義」とは、恒久的施設があったとしでも、それに帰属しない所得については、源泉徴収のみで課税を完了させるという考え方です。

前者は、国内で恒久的施設を通じて事業活動を行う者に対しては、国内の源泉から生ずる全ての所得について、居住者と同様に課税するという考え方です。

これに対し、後者は、恒久的施設に帰属する所得に限って、居住者と同様に課税するという考え方です。

それぞれの考え方とイメージを図に示すと次のようになります。

図表-1 総合主義と帰属主義のイメージ

☆総合主義
「恒久的施設あり」
・事業所得 100
・投資所得 40
・その他の所得 30
※国内源泉所得170に対し、源泉徴収の有無にかかわらず、全て総合課税
※国外源泉所得は課税外

☆帰属主義
「恒久的施設あり」
帰属 ↑
事業所得 80 ‖ 20
投資所得 20 ‖ 20
その他の所得 15
※国内源泉所得のうち恒久的施設に帰属する部分(80+20+15)に対し総合課税
※それ以外については源泉徴収のみで課税完了
※国外源泉所得でも恒久的施設に帰属するものがあれは課税完了

2.二元的に採用
Q:
我が国で採用されているのはどちらで、その理由は?
A :
国内法においては「総合主義」が採用されています。

これは、非居住者や外国法人が日本に事業所等を有して事業活動を行う場合には、その非居住者や外国法人の日本に対する「属地的対応関係」が深いことから、日本源泉の所得については、居住者や内国法と同様に、その全所得を総合合算して通常の税率で課税することが適当と考えられていたことによるものです。

それに対し、我が国が締結している租税条約においては、OECDモデル租税条約の示された考え方に基づき、「帰属主義」によっています。
その点で、いわば二元的な体制となっています。

3.帰属主義への見直し
Q:
世界的な潮流はどちらなのでしょうか。また、我が国の体制について見直しはあるのでしょうか。

A :
世界的な流れは、基本的に「帰属主義」の方向です。
そこで、我が国でも、平成24年度の税制改正大綱で、「総合主義」によっていた従来の国内法の立場を見直し、租税条約で採用されている「帰属主義」に沿った規定に見直すべく具体的に検討を行う旨が明記されています。
(第3章8検討事項(8))

平成24年度税制改正大綱(抄)
平成23年12月10日
閣議決定
第3章 平成24年度税制改正
8.検討事項
〔国税〕
(8)非居住者及び外国法人に対する課税原則については、OECD モデル租税条約の改訂等を踏まえ、様々な産業における実態や影響等を考慮しつつ、いわゆる「総合主義」に基づく従来の国内法上の規定を「帰属主義」に沿った規定に見直すとともに、これに応じた適切な課税を確保するために必要な法整備に向け、具体的な検討を行います。

Q:
いわゆる1号所得についてはどうなるのでしょうか(申告不要になるのでしょうか)

A:
国内における資産の運用、保有、譲渡等から生じる所得(いわゆる1号所得)については、源泉徴収のないものについては課税となります。申告により納付することとなります。

また、源泉徴収を要するものについては、源泉徴収のうえ申告でその分を税額控除する形で納税することとなります。

●参考
総合主義(全所得主義)と帰属主義の課税方式の違い(所得の種類別)

【総合主義】
(注1)わが国の現行国内法
●国内源泉所得 PE あり(注2)‖PE なし
・国内事業所得 ◎‖×
・国内資産の運用・保有 ◎‖○(申告)
・国内資産の譲渡 ◎‖△(申告)(注3)
・国内不動産の譲渡・賃貸 ◎‖○(源泉+申告)
・利子・配当・使用料 ◎‖○(源泉)
●国外源泉所得 ×
◎:すべての国内源泉所得を対象に「ネット所得課税」(一部源泉徴収+申告)
(注2)わが国の現行国内法では、PE をさらに3段階に区分し、ネット所得課税(申告)の対象を振り分けている。
(注3)原則「課税対象外」
…事業譲渡類似株式の譲渡益等は「一部課税(申告)」

【帰属主義】
(注4)主要国における一般的なイメージ

●国内源泉所得 PE あり‖PE なし
PE 帰属|PE 非帰属
・(国内事業所得) ◎|×
・国内資産の運用・保有 ◎|○(申告)
・国内資産の譲渡 ◎|△(注3)
・国内不動産の譲渡・賃貸 ◎|○源泉+申告
・利子・配当・使用料 ◎|○源泉
●国外源泉所得 ◎|×
◎:PE 帰属所得を対象にネット所得課税
(国内源泉所得)
(一部源泉徴収+申告)
※PE 帰属所得は国内源泉所得とされる
(資料出所:税制調査会平成22年11月9日)


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