世界の良書…心に残る一句
7.九十三年(全2巻)/ユゴー
上:暴虐に対する人間愛の勝利
下:革命と良心の葛藤劇
一七九三年五月の末のころ、サンテール将軍の指揮下にブルターニュへ攻めこんだパリ軍の一大隊が、…
ゴーヴァンは話しつづけた。
「女性についてはいかがですか?女性をどう扱われるおつもりですか?」
シムールダンが答えた。
「いまと同じさ。男性の奉仕者だよ」
「そうです。ただしひとつの条件づきで」
「どんな条件だ?」
「男性が女性の奉仕者になるという条件です」
「本気でそう思うのか?」と、シムールダンが叫んだ。「男が奉仕者だと! とんでもない。男は主人だ。わしが認める王政はただひとつ、家庭という王政だけだ。男は家庭では王なのだ」
「そうです。ただひとつの条件づきで」
「どんな条件だ?」
「女性が家庭の女王になるという条件です」
あれはいったいなんだろう。
…
「九十三年」は古い世界に向かってこう言ったのだ。「さあ、やってきたぞ」
断頭台は城塔に向かって、こう言う権利をもっていた。「わたしはおまえの娘なのだ」
と同時に、城塔の方も、こうした死とのつながりのあるものは暗い生き方をしているから、自分はこの娘に殺される、と感じていた。
そして、この二つの魂、悲劇を分け合う姉妹とも言うべき二つの魂は、ともに連れだって、飛び去っていった。ひとつは闇、ひとつは光と化して、たがいにもつれあいながら。