
レポート:各地域の現状
 ─華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)
 中国経済と日本企業2013年白書より 
 
 ◎各地の経済動向の概要
 2012年の地区総生産(GRP)は、
 上海市7.5%
 江蘇省(上海市の北部)10.1%
 浙江省(上海市の南部)8.0%
 ちなみに、
 北京市は7.7%
 中国全国は7.8%
 
 人口は
 上海市2,400万人
 江蘇省8,000万人
 浙江省5000万人
 華東地域合計1億5000万人
 
 上海市は、第三次産業が経済成長を牽引している。12年は上海市への対内直接投資の延びが拡大。
 
 江蘇省は第二次産業のウェイトが高い。社会消費品小売総額の全国の伸びを上回り、また対内直接投資も伸びている。
 
 浙江省は第二次産業のウェイトが高いが、伸び率では第三次産業が上回っている。また、固定資産投資が全国の伸びを上回り、対内直接投資も伸びている。
 
 ◎具体的問題点
 1.工場立ち退き
 第三次産業中心の産業構造へと変化するにつれて、上海やその周辺部の華東地域の都市において、工場の立ち退きが求められる事象が増加しつつある。
 事前の十分な情報開示と適正な補償が問題となっている。
 
 2.労働契約法の見直し
 派遣業務に対する規制強化が盛り込まれているが、雇用の柔軟性を失い、企業にとって負担となることも懸念されている。
 
 多くのサービス業において、土日祭日出勤が常態化しており、賃金の割増しが求められており、大きなコスト増要因となっている。
 
 3.電力制限規制
 電力制限の有無が、企業の間で引き続き高い関心事項となっている。
 企業に対する電力制限を行わないことと、万一制限が不可避の場合の十分な時間的余裕が求められている。
 
 4.就労ビザの発給制限の緩和
 60歳以上の者への就労ビザの発給制限により、豊富な経験を有する有能な人材の活用をすることができない。
 また、高卒の技術者の就労ビザが取り辛い事例もある。
 
 5.良好な日中ビジネス環境
 体外開放、持続的成長の堅持、日中友好、平等互恵に基づく良好な日中ビジネス環境の実現が求められている。
 日系企業の展示会や日本製品の即売会等を増やしていく。
 
 6.輸入通関手続の明確化・簡素化
 通関手続に要するに時間が長く、基準が不透明な事もあり手続も煩雑。
 HSコードの見解が担当者により突然変更されることも多い。
 各税関によって必要な書式が異なっているなど、事務手続が煩雑になっている。
 
 7.社会保険強制加入の経過措置
 外国人就業者の社会保険加入義務が、進出企業にとっては大きな負担増となる。
 日本と中国での社会保険料の二重払いを防止のため、社会保険協定の締結・発行が急がれる。
 また、失業保険及び生育保険に係る保険料受給が困難との懸念を排除するため、社会保険料強制加入に関する経過措置の導入が望まれる。
 
 8.金融・サービス業分野での規制緩和
 金融を始めサービス産業については、内外企業の差別的な規制がまだ多い。
 
 また新規事業についても原則許認可制となっている。
 
 9.化学品や危険物規制の実施
 上海市においては、化学品の生産工場を半減する目標を打ち立てているが、化学品製造許可書の更新が行われず、企業運営が成り立たなくなる懸念のある企業も出てきている。
 
 また、危険物の取り扱い責任者の許可証取得が財務経理担当者まで求められるなど、不合理な決まりとなっている。
 
 10.法令制定過程の透明化・明確化
 法令が急に制定・改正されたり、行政指導や行政処分の理由が明確に示されないことが多い。
 
 11.事業所の移転の円滑化
 行政区間当惑またがる事業所の移転・撤退に際し、税務署による発票の発給遅延、過去に遡った徹底的な税務調査等の不利益な行為を受けることがあり、最適な事業体制構築の阻害要因となっている。
 
 12.外貨換金規制の緩和
 人民元高が進む中、外貨資本の人民元への換金が規制されているため、企業の資本金が目減りしており、円滑な事業活動の障害となっている。
 
 13.企業の海外送金・投資に関する制限
 役務提供などのモノの輸出入を伴わない契約において、海外送金が制限され、相当な税負担が求められる。
 
 また、中国内の外資企業が中国外に海外投資をしようとしても許可が取れず、実施が実質的に困難である。
 
 14.独占禁止法の審査基準の明確化
 独占禁止法に絡み申請を行っても、なかなか許可が下りずに理由が不明確な場合もある。
 
 15.流通業における商慣行の見直し
 大手流通小売店が入場料を毎年引き上げるという商慣行により、流通コストが上昇している。
 これは、一部で見られる品質の劣悪な商品の流通という問題の一因ともなっている。
 
 16.建設業における分公司設立等
 各省、市、区における建設工事において、地元政府から分公司の設立を求められたり、その地区での納税を求められたりする。
 
 分公司設立の際に要求される保証金の返還を求めると、当該地域で1年間工事を行うことができないとされる。
 
 17.企業登記における住所の規制緩和
 中小企業においてはコスト削減のため住宅で登記したいとのニーズも多く、企業登記の際の住所を住宅など土地建物の用途を問わずに出来るように求められる。
 
 また、一つの住所には一つの会社しか登記ができないが、グループ会社では複数の会社が一ヵ所で活動したいとのニーズもあり、一ヵ所の住所で複数の会社が登記できるように求められる。
 
 18.輸入決済の90日ルールの撤廃
 輸入決済の90日ルールは、これを越えた場合に膨大な書類の添付が求められるなど健全な商取引の妨げとなっている。
 撤廃が求められる。。
 
 19.政府調達における内外差別の撤廃
 インバーター付きエレベーターなど環境にやさしい製品であっても、100%中国出資でないと政府調達に参入できない。
 
 20.不動産物件の用途変更
 上海市内中心部など、地区によっては店舗物件が少なく賃料が高止まりしている。
 不動産物件の用途変更が容易に出来る様に求められる。
 
 21.手続きや基準の明確化
 外貨の管理制度および税制等に関しては、まだ比較的窓口判断となる事項が多いため、手続きや基準の明確化が求められる。
 
 22.虹橋空港の通関体制の整備
 虹橋空港で通関できないため、浦東空港に一旦貨物を運び通関した後、それを虹橋空港に戻し、日本へ輸送することを余儀なくされている。
 
 23.行政機関が2地区に分かれる事象
 新区の設立等により行政区画が整理されたことにより、届出種類毎に手続先が新区と旧区に分かれる事象が生じてしまっており、窓口の一本化が求められている。
 
 24.社会保険制度の更なる明確化等
 社会保険の保険納付基準(率)が地域単位(省、市、県)により異なり、保険ごとに管轄する地域単位が違い管理が煩雑になってい事例も生じており。社会保険制度の更なる明確化、統一化が求められている。