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◎ニュースの焦点を聞く
米大統領選
「反トランプ」勝利招く/慶応義塾大学 渡辺靖教授
2020/11/13 1面
根源的には、民主的な価値や理念が米国を束ねてきた「理念の共和国」が、トランプ氏によって壊されてしまう、という有権者の叫びがあったと見ている。バイデン氏は積極的な支持で勝ち抜いたというよりは「反トランプ」の機運に助けられたと言える。
■バイデン氏、国際協調路線に回帰へ
――「米国第一主義」からの転換は進むか。
渡辺 トランプ氏の「米国第一主義」が国益を損ねたというのがバイデン氏の立場だ。基本的には自身が副大統領を務めたオバマ政権時代の政治状況に戻ろうとするのではないか。国際協調路線に回帰し、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」や世界保健機関(WHO)、イラン核合意などに復帰するとみられる。
バイデン氏が、トランプ氏のやっていた分断を煽るようなことをやめるだけでも社会のムードは変わっていく。求心力が高まれば、日本や韓国など同盟国との関係を強化していくのではないか。
――議会との関係は。
渡辺 政府人事や条約の承認権を持つ上院の議席は確定していないが、共和党が過半数を維持した場合、バイデン氏が実現をめざす大規模な経済対策や、環境・インフラへの2兆ドル投資などにマイナスの影響が出るだろう。一方で、民主党・急進左派の勢いが抑えられ、現実的に政権が動いていくというプラスの見方もできる。
■日米に安定感も
――日米関係の展望は。
渡辺 トランプ氏のような同盟国に対する奇異な提案はなくなるだろうから、安定感が出てくる。民主党は軍事費削減に積極的で、日本側に負担を求めることもあろうが、日米間には、課題を解決できる知恵と信頼がある。外交政策も基本的に立場は同じであり、やりやすくなるだろう。
日本は、米中と東南アジアなどとの関係を調整するスタビライザー(安定装置)を担える立ち位置にあり、その役割を果たしていくことが地域の安定に重要だ。
外交で他国は相手国の政権基盤がどこまで強いかを当然見てくる。政権基盤が強ければ、真剣に交渉するだろう。日本でも、政権基盤の強さを示せるかが重要だ。そういう意味で与党の一翼を担う公明党の存在、果たすべき役割は世界的にも大きい。