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米国の難路 バイデンの選択(下)
対中国、正念場の国際協調
中国総局長 高橋哲史
日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)
2020/11/12 2:00
米大統領選の開票が続いていた4日夜、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が電話した相手はイタリアのマッタレッラ大統領だった。
「中国は引き続きイタリアを支援する用意がある」。習氏が新型コロナウイルス対策で援助を申し出ると、マッタレッラ氏は「最も困難なときに中国は我々を助けてくれた」と謝意を示した。
自由と民主主義を掲げる主要7カ国(G7)のイタリアが、強権的な一党支配を貫く中国に引き寄せられる。
「中国はより多くの国と、よりレベルの高い自由貿易協定(FTA)を結びたい」。習氏は4日の演説で、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓FTAの早期実現に意欲を示した。トランプ政権への不信を募らせた欧州連合(EU)との投資協定も急ぐ。
いずれも米国が加わらない枠組みだ。トランプ氏が2017年に脱退を決めた環太平洋経済連携協定(TPP)への参加も視野に入れ、米国の影響力が及ばない経済圏を広げようとしている。
もっとも、自国の主張を一方的に振りかざし、香港や台湾、南シナ海などで強硬姿勢を崩さない中国に、世界は厳しい視線を注ぐ。日本では習氏の国賓訪日に反対する声が強まり、欧州は対中政策の見直しに動く。
言論の自由を認めず、一党支配を堅持する中国とどう向き合うのか。高関税をかけて相手を屈服させようとしてきたトランプ流は、国際社会の共感を呼べなかった。米国が身勝手なふるまいを続ければ、民主主義を信じる国々の結束は揺らぐ。
バイデン氏が米国の分断を修復し、国際社会の信頼を取り戻す。それ以外に、一党支配への自信を深める中国に対抗する道はないはずだ。