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米国の難路 バイデンの選択(上)
民主主義再生 盟主に試練
ワシントン支局長 菅野幹雄
日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)
2020/11/10 2:00
「万感の思い。ほっとしたけど、少し心配だわ」
「来年1月までトランプ氏は執務室にいる。なお多くの悪さを働くかもしれない」。
新型コロナウイルスの脅威と科学者の意見を軽視し、自分が感染してもそれを強引な経済再開の口実にした。有権者はそんなトランプ氏を見限り、消去法でバイデン氏に票が動いた。「まともな政治」を掲げたバイデン氏は大統領選で史上最高の7500万票を得た。
一方、見逃せないのは異端のトランプ氏も7100万票とオバマ前大統領を上回る票を得たことだ。事実に反する主張があっても、大衆迎合、自国第一という「本音の政治」を進めるトランプ氏の支持層は堅固だ。
分断は身内にもある。「民主党はトランプ退場を優先して内部で争わなかった。政権交代に成功したら左派から非常に強い圧力を受け、国の分極化に拍車がかかる」
バイデン氏を待つもう一つの分断が、同盟国との関係や国際協調での信頼感の揺らぎだ。「バイデン氏勝利で米国は再び世界を率いる意欲を取り戻すだろう。民主主義を最も有力な政治理念として守り、国際機関を律するルールにしていかねばならない」。ロビン・ニブレット英王立国際問題研究所(チャタムハウス)所長は強調する。
「世界の模範になる」。バイデン氏は決意を語るが、超大国を再び結束する道筋は描けていない。政権交代の熱気が冷めればバイデン氏は厳しい現実に直面する。