北斗七星
2020/10/10 1面
インド独立の父、マハトマ・ガンジーに「人生で最も創造的な経験は何でしたか?」と尋ねた人がいる。ガンジーの答えは意外だった。だからこそ、この問答は後世に語り継がれている
◆創造的な経験の答えは、若き弁護士時代に南アフリカで屈辱的な人種差別を受けたことだった。「マリッツバーグ駅での一夜」と言われるこの出来事は、『ガンジー自伝』(中公文庫)に詳述されている
◆仕事のため長距離列車の一等車に乗っていたガンジー。列車が高原の町マリッツバーグ駅で停車した際、白人乗客から通報を受けた駅員に「君は貨物車のほうに乗るんだ」と命令された。ガンジーが「一等車の切符を持っている」ときっぱり断ると、警官がやって来て無理やり列車から引きずり下ろされたのだ
◆真っ暗な駅舎で寒さに震えながら一夜を過ごしたガンジー。インドへ逃げ帰ろうか、それとも理不尽な人種差別と戦うのか。怒りと恐怖の混じった自問自答の末にガンジーは非暴力不服従の人権闘争を誓った。一夜の出来事が平凡な弁護士人生を歩んでいたガンジーの胸中に劇的な変化をもたらした
◆コロナ禍で未曽有の危機に直面する今、分断と対立を乗り越え、“つながり”“支えあう”社会を築こうと公明党は党大会で出発した。壁を破る創造的な取り組みが求められている。(鷲)