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【大機小機】菅内閣と黒田日銀の新連携
日本経済新聞 朝刊
2020/9/29 2:00
菅内閣発足後、黒田東彦日銀総裁は金融政策運営につき2つの注目すべき発言を行っている。第1は、17日の金融政策決定会合後の記者会見で、「私の任期は2年半ほど残っているが、途中で辞めるつもりはない。23年4月までの任期を全うするつもりだ」と明言した点だ。第2は、23日の菅義偉首相との会談直後「政府、日銀が十分に意思疎通し、しっかり連携して政策運営を行ってゆくことで菅総理と意見が一致した」と述べたことだ。
黒田総裁の7年半の実績は、異次元と称する量的・質的緩和政策による巨額流動性供給で市場を安定化、マイナス金利導入によるイールドカーブ全体の引き下げ、イールドカーブ・コントロールによる長期金利の操作、非国債証券類の購入など新しい施策を大胆に実行し、政府と協調しつつ日本経済を「デフレではない状況」とすることに成功したことだ。さらにコロナ対策として十分な資金を市場に供給している。こうした実績により、国民の大多数が黒田総裁に信頼を置き続投を歓迎している。
しかし、こうした黒田総裁の斬新で効果を上げる金融政策運営に反対し、「巨額の国債購入は日銀の独立性を侵害し財政政策の下僕におとしめた」と主張する学者、評論家、日銀旧幹部などがいる。これら守旧派は安倍前首相の辞任と同時に黒田総裁の退任も期待していたようだ。だがこれら守旧派はデフレからの脱却に失敗した日銀旧幹部などが中心であり、金融政策運営からは身を引くべき人達だ。
第2の、政府と日銀の十分な意思疎通としっかりとした連携は、日銀法第4条の「日本銀行は、金融政策が政府の経済政策と整合的となるよう常に政府との連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」を新たに生かすことだ。菅内閣はデジタルトランスフォーメーションによる国家の効率化を開始し、構造改革や先端科学技術開発による経済成長も期待される。
こうした大胆な改革が国民の将来に対する期待を一段と前向きに変えてゆく可能性が高く、金融政策の自由度が増すこととなる。菅新内閣の改革と黒田総裁の金融政策との新しい連携が、国民経済の健全な発展を一層促進し、日本国が再び世界の一流国家と成ることが期待されている。