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2020.10.1-6

2020年09月30日 (水) 09:17

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〈SDGs特集〉
国連環境計画金融イニシアチブ・末吉竹二郎特別顧問に聞く

【プロフィル】すえよし・たけじろう 東京三菱信託銀行(ニューヨーク)頭取、日興アセットマネジメント副社長などを経て、2003年から現職。日本政府の地球温暖化に関する懇談会委員、外務省の気候変動に関する有識者会合座長を務め、2018年に世界自然保護基金ジャパン会長に就任。

●コロナ危機と気候危機――経済と環境を両立させた復興を

――気候変動の影響で森林火災や干ばつ等の異常気象が頻発するようになると、居場所を追われた動物や、活動範囲が広がった蚊などの吸血昆虫との接触が増え、感染症のリスクが高まるという指摘があります。
 
 コロナ危機と気候危機には、共通点が多いように思います。かつてエイズウイルス(HIV)が猛威を振るった時、“森の逆襲”と言われました。人間が自然を破壊した結果、もともとの住人であった病原菌が襲いかかってきたというわけです。
 
 新型コロナウイルスも、本来は人間と接点のないウイルスだったとすれば、それが突然現れてきたのは、人間が自然や他の生物との関係を破壊してきたことに一因があるのではないでしょうか。
 
 気候危機も同じです。人間が生活の豊かさのために、大量に二酸化炭素(CO2)を排出する石炭や石油などのエネルギーを使い始めた。その結果、大気が破壊され、気候危機につながった。こうみると、双方の遠因は共通しています。
 
 また、コロナ危機も気候危機も、弱い立場に置かれた方々が、より影響を受ける傾向にあります。普段から危険だと言われている地域にしか住居を持てない人は、高い災害のリスクにさらされるわけです。安全に生活する権利が侵されているという点で、二つの危機は人間らしい生存の権利を脅かす人権の問題でもあるのです。
 
 原因が共通で影響が同じところに収斂しているのであれば、コロナ危機と気候危機を一緒に解決する方法を考えていくのが自然ではないでしょうか。
  
――新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の制限で、地球温暖化の主な要因とされるCO2の排出は一時、大幅に減少しました。年間で約8%減と見込まれています。
 
 “インドで大気汚染が改善し、数十年ぶりにヒマラヤが見えた”といった話もありましたが、今回のコロナ禍は一面、私たちの生活の在り方がいかに環境を汚染しているかを実感させるものだったと思います。と同時に、当然ですがCO2を大量に排出する経済活動を抑えれば、CO2は確実に減少することが明らかになりました。その意味で私は、世界が「脱炭素化=注」に向かう可能性を見た思いがしています。
 
 一方、難しさも明確になりました。地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」が掲げる目標を達成するには、毎年8%程度CO2の排出を減らし続ける必要があります。しかし、世界中でロックダウン(都市封鎖)を行い、経済活動を制限して削減できるのが8%ですから、目標の達成が容易でないことも分かったわけです。

●気候変動対策の一環として、自発的に環境保全の活動に取り組むイギリスSGIの友(昨年6月)

 ――気候危機の打開に向けて、宗教者に期待されることはありますか。
 
 気候危機もコロナ危機も、一見、科学の範疇の問題であり、宗教とは対極であるように考えられています。しかし、私はむしろ、二つの危機は共通して人々の日常生活に深く関わる社会問題であり、人の生き方の問題であり、次世代に非常に大きな影響を及ぼす問題だと考えます。
 
 その意味で、宗教界がこの問題について何を考え、どういう方向を目指しているのかを社会と共有していくことが大切なのではないかと思います。
 
 今、世界で起きていることは、ある意味で人間社会の在り方を根底から問い直す良い契機とも言えるのではないでしょうか。人間の生き方を日頃考えられている皆さまなら、より良い解決法を生み出していけると思いますし、創価学会のように重要な宗教界の方々がこうした問題を共に考え、取り組もうとされている姿は、多くの人たちにとって励ましのメッセージになると思います。
 注=脱炭素化とは 地球温暖化の主な要因とされる二酸化炭素などの排出量をゼロにすること。石油や石炭などの化石燃料からの脱却が課題となっている。パリ協定では、今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指している。


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