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2020.9.30-4

2020年09月29日 (火) 18:26
2020.9.30-

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【Deep Insight】中国に幻滅した東欧
日本経済新聞 朝刊
2020/9/29 2:00

 共産党が牛耳る中国は好きではない。それでも、ビジネスでは彼らは有望なパートナーだ。

 チェコやハンガリーを2年前に訪れた際、対中関係について外交官や識者にたずねると、こんな声が聞かれた。経済建設を急ぐ東欧は中国熱を帯びていた。しかし、今や期待はしぼみ、失望に変わろうとしている。

 すでにドイツやフランス、英国といった西欧では、対中観の冷え込みが明らかだ。南シナ海やサイバースパイ、香港の自治侵害、ウイグル族の弾圧……。これらが重なり、新型コロナウイルスの拡散も追い打ちをかける。

 9月14日の欧州連合(EU)と中国によるテレビ首脳会談では、議長国ドイツのメルケル首相らが人権問題で批判を浴びせた。習近平(シー・ジンピン)国家主席は「人権の先生は要らない」と怒り、極めて険悪だったという。

 そして中国に融和的だった東欧でも幻滅が広がり、経済で結ばれてきた欧州と中国の蜜月は事実上、終わりを告げようとしている。世界は米欧日と中国による2極対立の色彩が濃くなるだろう。

 東欧で中国熱が高まったのは、もう8年前のことだ。この地域の16カ国は2012年、中国と「16プラス1」という経済協力の枠組みをつくり、ほぼ毎年、首脳会議を開いてきた。

 16カ国のうち11カ国はハンガリー、チェコといったEUメンバーだ。19年にギリシャも加わり「17プラス1」となった。

 これに対し、独仏は「中国によって東欧が囲い込まれ、EUが分断されてしまう」(独当局者)と危機感を募らせてきた。南シナ海問題でEUが中国非難の声明を出そうとした16年には、対中配慮からハンガリーなどが難色を示し、足並みが乱れる騒ぎもあった。

 ところがそんな東欧で一転、中国離れの波が広がっている。


 急先鋒(せんぽう)はチェコだ。ミロシュ・ビストルチル上院議長が8月末から台湾を訪れ、中国を激しく怒らせた。これに先立ち、首都プラハ市は北京市との姉妹提携を解消し、1月に台湾・台北市と結びなおした。

 次世代通信規格「5G」の安全対策をめぐっても、ポーランドやチェコ、ルーマニア、エストニアが昨年から今年にかけ、米国との協力に合意。中国通信大手、華為技術(ファーウェイ)を制限する姿勢をにじませる。さらにルーマニアでは今年6月、中国企業との原発建設計画が破棄された。

 いったい何が起きているのか。内情を知る現地の外交専門家らにたずねると、第1の原因は経済協力への失望だ。中国は「一帯一路」構想をかかげ、巨大なインフラ整備の大風呂敷を広げた。だが、さほど進んでいない。

 プラハ国際関係研究所のルドルフ・フュルスト主任研究員は語る。「中国は12年以降、中欧、東欧で主にエネルギーと輸送インフラの投資プロジェクトを多数、手がけた。だが、バルカン諸国を除けば、ほとんどが完全には実現していない。このため、中国との経済協力への期待が薄れている」

 2000〜19年、中国からEUに注がれた直接投資のうち、東欧向けは10分の1にも満たない。親中派を自認してきたゼマン・チェコ大統領ですら今年1月、ついに失望を表明した。

 第2に中国との交流が深まるにつれ、内政干渉や安全保障への不安も高まっている。ポーランドでは昨年1月、ファーウェイのワルシャワ支店幹部がスパイ容疑で逮捕された。

 チェコでは情報機関が19年11月、同国内で中国のスパイ網づくりが加速しており、ロシアと並ぶ深刻な脅威になっていると結論づけたという。チェコの国会議員は「中国国有企業からチェコ政府高官に、不透明な資金が流れたという疑惑もある」と憤る。

 東欧はかつてソ連の共産圏に組み込まれ、1989年以降に民主化の扉が開いた。中国の経済力に魅せられても、共産党体制に共感しているわけでは全くない。

 オルバン首相による強権化が進むハンガリーでも、事情は同じだ。同国の政治専門家は「オルバン政権ですら曲がりなりにも選挙はやっている。中国の独裁モデルは受け入れがたく、経済協力が進まないなら、接近する意味はない」と切り捨てる。

 東欧よりも先に、英独仏が中国に幻滅するようになったのも、人権や安全保障の問題だけではなく、外資系企業への規制が強まり、対中ビジネスが難しくなっていることが大きい。在中国EU商工会議所の調査(今年2月)によると、中国内で活動するEU系企業の49%が過去1年でビジネスがより困難になった。

 何とか欧州を引き留めようと、中国は新型コロナの発生後、感染者が多いスペインやイタリアにマスク外交を展開した。だが、世論が改善するには至っていない。

 仏戦略研究財団のアジア研究主任、ヴァレリー・ニケ氏は「欧州における対中観の悪化は数々の問題が積み重なった結果で、コロナ禍は流れを加速したにすぎない。近い将来、関係が元通りになることはないだろう」と話す。

 もっとも、中国市場に大きく頼るドイツなどが、米国ほどに中国に厳しくなるとは考えづらい。それでも米欧日の対中認識が近づけば、連携の余地は広がる。トランプ政権下で米欧の仲は極めて険悪だが、せめて対中政策では協力を立て直すときだ。


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