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遺贈 思い託し社会貢献
希望の団体へ 遺言で意思表示
日本経済新聞 朝刊
2020/9/26 2:00
●「おひとり様」多く
「財産を社会の役に立てたい」「付き合いのない相続人に財産を渡したくない」――。遺贈はこうした人の思いをかなえる仕組みだ。生前に遺言を書いて死後に団体や個人に寄付をする。
民間団体の調査では2018年の非営利団体への遺贈寄付は約700件、450億円を超す。遺贈を希望する人の支援をする全国レガシーギフト協会(東京・港)によると「遺贈寄付は増加傾向が続いている」。
多いのは配偶者も子も兄弟姉妹もいない「おひとり様」とみられる。一方で相続人がいながら財産の一部を寄付する人も増えているという。同協会は今月、約30組織・団体などと普及キャンペーンを展開。経験者の講演をネットで配信するなどした。
通常は相続人がいない人が亡くなると、財産は最終的に国に納められる。国庫納付される遺産額は増加しており、18年度は600億円を超え前年度より100億円以上増加、10年で約3倍に膨らんだ。遺贈なら死後に自分で使うことができない財産を、希望する相手に継承できる。
●手続きで注意点
自分で遺贈の準備をする際には注意すべき点がある。まず、遺贈には「現金○○円」「××銀行の預金」など財産を個別に指定して渡す「特定遺贈」と、財産の全部、または2分の1など一定の割合で渡す「包括遺贈」がある。
包括遺贈は債務があればそれも引き継ぐので、団体へ財産を渡すには特定遺贈が適しているとされる。どちらの遺贈も「相続人がいる場合、もめないように遺留分(多くが法定相続分の半分)があれば配慮する必要がある」と税理士の福田真弓氏は指摘する。
また「現金を遺贈しても相続人に所得税はかからないが、不動産や株式などを遺贈すると、そのときの時価で譲渡したとみなされて相続人に所得税がかかることがある」(福田氏)。「みなし譲渡課税」と呼ばれる制度で、相続人にとっては遺贈で受け取る財産が減るだけでなく税金の負担も加わるので不満が出るかもしれない。こうしたこともあり、現金の遺贈しか受け付けていない団体もある。
遺贈は贈る人が死亡して初めて実行される。遺言を作ってから執行まで長くかかると財産の内容が変わってしまうこともある。託した思いをきちんとつなげるには、専門家に相談して慎重に手続きを進めたい。