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2020.9.26-4(3)

2020年09月25日 (金) 23:35
2020.9.26-

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【FINANCIAL TIMES】企業代理戦争、中国が有利
北京支局長 トム・ミッチェル
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(7ページ)
2020/9/25 2:00

 ティックトック争奪戦は、同アプリを開発した親会社の北京字節跳動科技(バイトダンス)が米国内ユーザーの情報を国外に出さない安全策を取ることを条件に米国事業の支配権を維持できるかが焦点だが、トランプ氏は今のところ、これを許容する内容の合意を承認するかどうかはっきりした態度を示せていない。これに対し習政権は、その本心を明かすことなく、一貫して鉄のような沈黙を守っている。

 その意味でバイトダンスを巡る一連の出来事は、2018年春の中国通信機器大手である中興通訊(ZTE)と米半導体大手クアルコムを巡る米中による初の企業代理戦争を思い出させる。この時も習氏が冷静さを保つ一方で、トランプ氏は方針を二転三転させ、結局、中国が勝利した。

 ZTEは10〜16年4月の間に、イランに米国製通信機器を輸出するなどして米国の輸出規制に著しく違反した上、この状況を是正するために17年に米商務省と合意した内容も順守しなかった(編集注、ZTEは17年3月に米商務省に対し、違反行為に関わった従業員の特別金支払いを減らす等の社内処分を約束したが、実際には全額支払うなど米国側に虚偽の説明をしたとされる)。このためロス米商務長官は18年4月、米テック企業がZTEに部品を販売することを禁じた。それはZTEにとって死刑宣告されるに等しい措置だった。

 習氏は、国家の威信を保つことや数千に上る雇用を守ることなど、様々な理由から米政府によるこの措置を撤回させる必要があった。

 一方のトランプ氏は、習氏から2つの譲歩を引き出す必要があった。米国にとって有利で大規模な貿易協定の締結で合意することと、クアルコムが440億ドル(約4兆6000億円)でオランダの車載半導体大手NXPセミコンダクターズを買収する計画を中国の独占禁止法当局に承認してもらうことだった。両社とも中国で大規模に事業を展開しているため、同国の独禁当局の承認が必要だった。

 トランプ氏は、ZTE問題で習氏が希望する通り、ZTEにいわば「執行猶予」を与え、別の条件を受け入れさせて制裁を緩和する道筋を米商務省に指示し、同社が存続することを許した。だがトランプ氏は、ここで習氏に譲歩すれば他の問題では自分の要求が円満に通ると誤解したのだった。中国はZTE存続という米国からの贈り物をさっさと懐にしまい込んだが、クアルコムによるNXP買収への承認はいつまでも出し渋った。

 その後、米中貿易交渉が難航すると、習氏はNXP買収を認めることも却下することもせず、クアルコムは結局、時間切れで買収断念を余儀なくされた。

 トランプ氏は自分が抱える「人質」を早く手放し過ぎたのだ。同氏はクアルコムによるNXP買収の承認を取り付けるまで、ZTEの執行猶予を留保しておくべきだった。これらは少なくとも同等の価値がある「人質」だったのだから、同時に交換した上であらためて貿易交渉に腰を据えて臨むべきだった。

◇◇

 ファーウェイは一連の猶予措置によりその場をしのいできた一方、トランプ氏と習氏は今年1月、貿易協議の「第1段階合意」の文書に署名した。だがこの合意が実行されるかどうかも、11月の米大統領選でトランプ氏が再選されるかどうかも、中国武漢で発生したとされる新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により見通しが暗くなっている。そのため、トランプ氏はファーウェイの包囲網を狭めつつあり、今や同社の存続さえ危ぶまれている。

◇◇

 皮肉なことに、ファーウェイが生き残れる一つの道は、トランプ氏が大統領選で民主党候補のバイデン氏に勝利することだ。というのもトランプ氏が敗北したら、復讐(ふくしゅう)心に燃える同氏は自分の任期末まで可能な限り、中国政府がティックトックよりはるかに重要な企業とみなすファーウェイへの締めつけを必ず強めるだろう。一方、勝利したバイデン氏が大統領就任早々、習氏にZTE並みのプレゼントを進呈する理由もない。

 しかし、もしトランプ氏が勝利すれば、同氏はコロナ禍で大打撃を受けた米経済を修復すべく中国との貿易交渉を進めるため、ファーウェイに対し寛大な措置を取る可能性があるからだ。


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