???
春秋
日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)
2020/9/20 2:00
来春から使用される中学の教科書では、LGBTなど性的少数者への理解を促す記述が充実する。当事者であることを公表した日本文学研究者ロバート・キャンベルさんの文章も掲載されるという。多様性を理解し認め合う学校や職場へ。そんな願いが込められている。
▼この人は男性として生まれ育ち、その後、性認識が女性だと公表した。台湾のデジタル担当相オードリー・タン氏である。新型コロナウイルスの感染防止に尽力した天才プログラマーは性的少数者だ。学校にもなじめなかった。デジタル技術を、少数者も包摂する民主的社会の発展に役立てたい。真摯な思いを語っている。
▼翻って日本は――。国民に一律10万円を給付する際のオンライン申請では、確認作業に手間取り、手続きを停止する自治体も。コロナ感染者の集計にはオフィスの老兵・ファクスが大車輪の活躍。「デジタル敗戦国」と酷評される始末だ。菅義偉新政権の目玉政策のひとつは、デジタル庁の新設。大いに進めてもらいたい。
▼わが国は違うと信じるが、技術を市民の監視手段にする国もある。台湾の天才が願うようにデジタル化を推進する法律の目的に「自由で民主的・包摂的な社会を築く」といった理念を明示したらどうか。まずは公文書を電子化し、改ざんや不当な廃棄を許さない。首相が宣言したら喝采を浴びよう。隗(かい)より始めよ、である。