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2020.9.20-5

2020年09月19日 (土) 22:37
2020.9.20-

◎土曜特集(公明)
「医療安全保障」の視点コロナ禍
明星大学経営学部・細川昌彦教授に聞く
2020/09/19 4面

■(安定供給への戦略)「国内生産」「多角化」「備蓄」三つの組み合わせ重要

 ――どのような戦略が必要か。

 細川 参考となるのが、1970年代の石油危機だ。私は当時、通商産業省(現・経済産業省)で原油の輸入担当だった。日本は海外にエネルギーを依存しているため、エネルギーの安全保障ということを嫌というほど経験した。

 その時の対応策は三つあった。一つ目は石油の自主開発で、広い意味での「国内生産」だ。二つ目は「供給源の多角化」で、依存していた中東以外に分散した。そして三つ目は、石油の「国家備蓄」を始めた。

 医療分野でも同じ発想が必要だ。重要なのは、三つの手段をどう組み合わせ、どこに力点を置くのか。これらを考えて、手を打たなければならない。

 ――具体的には。

 細川 医療物資ごとに対応は異なる。例えばマスクや医薬品は、かさばらないため備蓄できるが、人工呼吸器はハイテク製品で常時メンテナンスが必要なため備蓄には、なじまない。コロナ禍では、自動車や電機メーカーなど異業種が医療機器を生産する動きも見られた。こうしたことも検討すべきだ。

 国産化を推進する上では、薬価の問題も重要だ。基本的には、医療費負担を下げるという財政的発想で薬価を決めてきた。その結果、後発薬は価格勝負で安い原料の調達が必要になる。自然な経済の流れだから、原則はこれでいい。ただ、命に関わるような重要な医薬品は、コストが高くても国内で作れるように薬価制度にも工夫があってもいいと思う。

 一方で、医薬品の原料をこれまで多くで使われてきた海外産から国産に変える場合の承認手続きや審査に手間取るケースも指摘されている。いずれにせよ、薬価や承認手続きなどが国産化推進の妨げとなっていないか検証する必要があるだろう。

 医療は、単純に経済合理性だけで制度を作っても、物事がすぐに変わっていくような生易しい分野ではない。そういうことを踏まえ、腰を入れて丹念に施策を打つべきだ。

■(国際協調への方途)日本が中堅国を主導/融通し合う仕組み構築急げ

 ――国際協調のあり方は。

 細川 国内で作るだけではなく、信頼できる国と連携して対応することも大事な視点だ。

 先日(9月1日)、日本、オーストラリア、インドの3カ国が一緒になってサプライチェーンを強化しようと会議を行った【別掲】。これは非常に重要だ。

 さらに3カ国に加えてASEAN(東南アジア諸国連合)の中で仲間を増やしてネットワークを構築し、いざ何か起きた時は、その中で物資を融通し合うということも考えられる。IEA(国際エネルギー機関)にある石油の緊急融通システムがいい例だ。

 ――日本に求められる役割は。

 細川 国際協調はまだスタート台に立ったばかりだが、国民の生命と安全に直結する分野だからこそ、この仕組みを早くつくり上げなければならない。日本にはそれを主導していく役割があると思っている。

 米国抜きのTPP11(環太平洋連携協定)も日本が調整役になってまとめた。「日本なら信頼できる」と他の国から思ってもらえていることが何よりの財産だ。この財産をステップに、国際的な仕組みづくりをけん引してほしい。

 米中などの大国間が対立している時に大事なことは、日本やオーストラリア、欧州をはじめとするミドルパワー(中堅国)の連携だ。その連携を主導するのが日本の役割であり、その重要分野の一つが医療だ。

 そういう大きな絵を持って、日本はこの問題に臨むべきではないだろうか。


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