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公明けいざいナビゲート
デジタル人民元
ジャーナリスト 尾林賢治
2020/09/16 2面
中国が主要先進国の先頭を切って、中央銀行である中国人民銀行によるデジタル通貨「デジタル人民元」を発行する。
今年5月から深圳、成都、蘇州、雄安新区(北京郊外)の4都市で先行実験を始めていたが、8月14日、実験地区を北京など28カ所に拡大すると発表。2022年の北京冬季五輪開催時までには全国展開する。
デジタル人民元は、銀行預金をスマートフォン(スマホ)上に移し替え、「電子財布」として財布代わりに持ち歩き、買い物や個人間の受け払いに使う。スマホから送金もできる。
将来的には現金の流通をなくしていき、真のキャッシュレス社会の実現をめざす。商店などは、カード会社に支払う1〜3%の手数料がゼロになるため、デジタル人民元は大歓迎だ。
しかし、銀行預金からスマホに移し替えてデジタル人民元として使う際に、氏名や身分証番号、電話番号などを入力しなければならないため、個人の金融取引がすべて政府に筒抜けになる。
政府はマネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪防止に役立つと強調するが、もっと大きな狙いは国境を越えた資金移動への監視強化だ。国外への資金流出は中国政府の頭痛の種で、これまでも元安局面になると為替市場への介入を強化しても、大量の資金流出が発生し、それがまた元安を助長することが多かった。
とりわけ、今後の米中貿易戦争の激化が予想される場面では、大量の資金流出で元安が発生する可能性が大きい。人民元のデジタル化が進めば、政府は資本規制強化の有力な“武器”を手に入れることができる。