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2020.9.17-4

2020年09月16日 (水) 22:24
2020.9.17-

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【中外時評】菅氏が迫る地方の構造改革
論説委員 斉藤徹弥
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(8ページ)
2020/9/16 2:00

 退任する安倍晋三首相は、2018年の自民党総裁選の折、政界引退後について党の動画番組でこう語っていた。「人生二毛作。ずっと映画監督になりたいと思っていたがプロデューサーもいい」

 このとき引き合いに出された作品が英米政界の人間模様を描いた「ハウス・オブ・カード 野望の階段」。トップを支えてきた側近が権謀術数をめぐらせ、頂点に立つ政治ドラマだ。今の菅義偉氏にはこれと重なる面がある。

 英国版と米国版があるが、人物像は英国版の原作(角川文庫)が近い。スコットランドで家長として先祖伝来の土地を守るのに飽きたらず、39歳でロンドン郊外の選挙区から政界入り。結果を追求する実務手腕に定評がある。

 首相退陣を受けた保守党の党首選に「私は裏方が合っているが、多くの仲間の声に応えないのは傲慢だ」と出馬して勝利。「イデオロギーより常識を信じる」という信条も「当たり前のことを実行する」と話す菅氏に通じる。

 安倍首相はこのドラマについて「もっとリアリティーのあるものを作る自信がある」と話していた。菅氏の国盗り物語は、安倍首相が演出に一役買ったのかもしれない。

 菅氏は政策にも英国流を感じさせる一面がある。例えば地方政策で東京一極集中をどう是正するかだ。

 東京とロンドンは、人口が増え、総人口の3割近くが首都圏に集中する状況は似ている。だが地方との関係では、コロナ禍で和らぐ傾向があるものの東京は転入超過が続いてきたのに対し、ロンドンは転出超過と正反対だ。

 ロンドンは金融都市として外国人の転入を増やし、自然増につなげてきた。増えた人口は地方に向かう。英国では研究型の大学の多くは地方に立地する。マンチェスターやバーミンガム、エディンバラなどは研究型大学と関連企業が集積し、ロンドンからの流入の受け皿になっている。

 例えばマンチェスターでは地方政府が地元大学に多額の研究費を出して欧州各国から研究者を集め、地元企業とコンソーシアムを組む。国際的な業績を残せなければ資金の返還を求められるという。

 三大都市圏以外でグローバルに戦うべき地方都市は「札仙広福」とよばれる札幌、仙台、広島、福岡だろう。これらの都市の集積や競争力を高めるには重点投資が必要だ。菅氏が掲げる中小企業や地方銀行の改革と合わせ、地方の構造改革ともいえるメニューになる可能性がある。

 菅氏は小泉政権で竹中平蔵総務相の下、副大臣を務め、三位一体改革の合意を見届けた。三位一体改革は09年の自民党下野の遠因とされる。地方財源が減り、都市と地方の格差が拡大。地方で自民党の強さを支えてきた中小零細企業の経営者ら保守層が離反し、政権交代をもたらした。

 この反省から安倍政権は地方財源を手厚くし、地方創生で満遍なく配ることで国政選挙の連勝を下支えしてきた。長期政権はこうしたウイングの広さが支えた面がある。低所得層には非正規の待遇改善などを推進。米中が対立する中、右派の反発を抑え込めたのも右寄りとされた安倍首相だからとの見方は多い。

 菅氏はこのウイングの広さを継承できるだろうか。地方財源を重点配分すれば他の地域が反発し、中小企業や地方銀行の改革も既得権益を持つ地方の保守層が抵抗しよう。地方の反乱で欧州連合(EU)離脱を招いた英国の轍(てつ)を踏まず、もろ刃の剣といえる地方の構造改革にどう踏み込むか。菅氏の太刀さばきが問われる。


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