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【大機小機】新型景気回復の足音
日本経済新聞 朝刊
2020/9/9 2:00
新型コロナの感染拡大に歯止めがかかりつつあるが、株価が調整色を見せるなどなお先行き不透明だ。今後の景気をどうみたらよいだろうか。
春以降、各国が都市封鎖や外出禁止など規制を強化した結果、人の移動が止まり、景気が失速した。アップルのモビリティーデータによると世界主要20カ国の人の移動は4月中旬に感染前の水準の30%まで急減した。その後、回復に転じたが、先進国の第2波と新興国の第1波が重なり、ブレーキがかかった。だが、感染拡大に歯止めがかかると同時に再び回復し、感染前の9割まで戻っている。
人の移動が回復すれば消費も回復する。国内の消費動向を「JCB消費NOW」でみると、4月を底に回復したが、感染第2波で7月から足踏み状態が続いている。だが、第2波のピークアウトで人の移動が回復し、消費も増加に転じる可能性が高い。
感染の波を3〜4カ月ごととすると年末には第3波の可能性がある。だが、主要国の第2波の死亡者数は第1波の約3割だ。医療関係者の努力と医療体制の整備、治療薬の投与、マスク着用はじめ公衆衛生意識の改善、知見の蓄積などで死亡者の増加が抑えられてきたことは朗報だ。
政府は季節性インフルエンザ流行期に備えた新たな取り組み方針を決定、近く発足する新内閣はコロナ収束に最優先で取り組むことになる。第3波の山を低く抑えることができれば、人の移動と消費の停滞は小幅になる。今回の景気はL字型ではなく、第1波で急落後、次第に衝撃波が小さくなる波状型回復になるのではないだろうか。
消費が回復すれば企業マインドも改善し、生産や投資も始まるだろう。今回は消費主導型回復になりそうだ。世界の人の移動を見ると、主要先進国はコロナ前の水準をほぼ回復したが、新興国は8割にとどまる。今回は先進国主導型景気になるだろう。
シリコンサイクルと新型コロナが重なってデジタル革命が景気を主導するのも今回の特色だ。米国も猛威を振るった感染が収まれば、コロナの損失を上回る巨額の経済対策で息を吹き返し、感染症対策が功を奏した西太平洋先進国とともに世界経済をけん引する環太平洋主導景気が始まるかもしれない。楽観は禁物だが、新型景気の始まりを見落としてはなるまい。
(富民)