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2020.9.10-4(2)

2020年09月09日 (水) 20:08
2020.9.10-

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【FINANCIAL TIMES】地中海が迫る「欧州自立」
チーフ・ポリティカル・コメンテーター
フィリップ・スティーブンズ
日本経済新聞 朝刊
2020/9/9 2:00

 ギリシャとキプロスの海軍を援護するため、8月13日にフランスが軍艦1隻と戦闘機数機を派遣した。トルコのエルドアン大統領はこれに反発し、トルコは東地中海における「当然の権利を手中にする」と警告した。ドイツのメルケル首相が仲裁に乗り出すも奏功せず、トルコとギリシャの軍艦が接近しすぎてぶつかる事故も起きた――。

 西側諸国の次の戦争が北大西洋条約機構(NATO)加盟国同士の争いになるなど、いったい誰が想像しただろうか。これが新たな国際的混乱の始まりなのだろうか。

 崩れ去ったパックス・アメリカーナ(米国による平和)から浮かび上がる国際情勢を知るには、東地中海で最近起きている出来事に目を向けるべきだ。世界全体の構図は、米中の2大大国の張り合いの中で形作られていく。一方で、地域の混乱も再燃しつつある。米国という審判がいなくなったことで、古傷が再び開き、過去の対立が復活している。

東地中海には、この地域の不安定につながる新たな材料がそろっている。中国、ロシア、トルコなどの修正主義勢力が現状を変えようとする取り組み、米国が過去に関与してきたことから撤退する動き、そして地政学を巡る強硬な対立をためらう欧州の姿勢がみて取れる。
 エネルギー資源をめぐるギリシャとトルコの対立は、地域という布地に昔から織り込まれてきた自制と妥協という糸が、あっという間にほつれてしまうという教訓だ。

 東地中海におけるギリシャとトルコの関係緊迫は珍しいことではない。ギリシャ系、トルコ系住民で住む地域が分断されているキプロス島はいわば開いた傷口に等しい。エーゲ海に浮かぶギリシャの島々の領海範囲をめぐる争いも同様だ。

 これらに加え、東地中海で巨大な海底ガス田が近年、相次ぎ発見されたことで、往年の緊張が一層激化した。このガス田を巡る争いは地域の他の国も呼び込み、それに伴って別の対立も生じている。イスラエルとエジプトはすでに、自国沖合のガス田で天然ガスを採取している。レバノンとリビアもガス田の権利を持つ。共同探査・生産やパイプライン建設も計画されている。

 こうした各国の思惑が複雑に絡み合っているからといって、資源の平和的な分割ができないことはないはずだ。つい数年前まで、こうした問題について、欧州は米国を頼れた。米政府はギリシャとトルコの首脳を一喝してくれたし、本当に状況が深刻化すれば、エーゲ海に軍艦を数隻派遣してくれた。

◇◇

 しかし、そうした時代は、もう過ぎ去った。実は米国は空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」を7月に地中海に派遣していたが、滞在期間があまりに短かったため、誰も気づかなかったほどだ。

 トランプ氏は行動に一貫性がなく地域に無関心で、いかなることもやったもの勝ちだというシグナルを送ってしまった。おまけに、トランプ氏は「ストロングマン(強権的な指導者)」が好きなため、エルドアン氏やプーチン氏は何をやってもおとがめなしだった。

 フランスのマクロン大統領は、米国が放棄した責任を欧州連合(EU)が引き受けなければならないという結論に達した。これはどう考えても正しい。また、エルドアン氏のような指導者と対峙する際には、欧州諸国の政府はハードパワーの行使を尻込みしてはいけないという判断も正しい。トルコの要求や主張には国際法を無視したものが多い。その姿勢は、トルコ政府が国連海洋法条約への参加を拒んでいることにも表れている。

 ただ、EUは一致団結しているわけではない。フランスがギリシャを支援しているのは、地域への影響力を維持したいフランスの動機とたまたま合致したからだ。イタリアとスペインは何としても軍事衝突を避けたいと思っている。そしてメルケル氏は、トルコが国境を再び開き、シリア難民が欧州に流入できるようにする策を通じてEUに報復することを恐れている。

◇◇

 エルドアン氏が権威主義に突き進んだことで、トルコがEUに加盟する見込みはかつてないほどゼロに近づいている。だからといって、隣国同士の貿易・投資関係の改善や、難民問題に関する長期的な認識共有を排除すべきではない。いずれにしても、第一歩はEUが自ら考えて行動する覚悟を決めることから始まる。

☆ギリシャとキプロスの海軍を援護するため、8月13日にフランスが軍艦1隻と戦闘機数機を派遣した。トルコのエルドアン大統領はこれに反発し、トルコは東地中海における「当然の権利を手中にする」と警告した。ドイツのメルケル首相が仲裁に乗り出すも奏功せず、トルコとギリシャの軍艦が接近しすぎてぶつかる事故も起きた――。


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