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2020.9.8-3(3)

2020年09月07日 (月) 21:18
2020.9.8-3

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【FINANCIAL TIMES】潮目変わったか 大統領選
チーフ・USポリティカル・コメンテーター
ジャナン・ガネシュ
日本経済新聞 朝刊
2020/9/7 2:00
 多弁で知られる米国のバイデン前副大統領は今回は違った。

 「私が急進的な社会主義者で、暴徒に強く出られないと思いますか」

◇◇

 問いかけはうまくいったが、発しなければならなかったことが問題だった。大統領選の投票日まで2カ月ある中で、暴徒化した反人種差別デモの参加者と距離を置く必要はないはずだ。バイデン氏は巧みに間合いをとったが、昔から政界でいわれているように「簡潔に説明できなければ負け」という事態に陥りそうに思える。

 5月の時点では、バイデン氏がデモ隊や警察をどう思おうが選挙には全く関係なかった。いや、新型コロナウイルス対策以外、重要なものは何もなかった。ここにきてバイデン氏が暴徒を批判せざるを得なくなったことは今夏、政治的議論の焦点が変わり、同氏に不利になったことを示す。政権のコロナ対応を問うはずの選挙だったが、犯罪や人種差別の問題が浮上したことで、今や争点が公共の秩序になった。窮地だったトランプ氏は頼みの綱を得たといえる。

 もっともその綱はすり切れそうで弱い。1968年の大統領選で共和党のニクソン候補が「法と秩序の回復」などを訴えて勝利したのとは違い、現職大統領が治安の悪化を嘆くのは自業自得だろう。ただ、この件でトランプ氏の対応を検証しようとするほど、コロナが争点の中心から外れてしまう。

 バイデン氏は果敢に闘っている。が、いかんせん土俵が違う。新型コロナが話題をさらっている間はトランプ氏の立場が弱まっただけではなく、民主党は結束していた。コロナ危機を通じ、党内にはこれまで国民皆保険や労働者保護などを訴えてきたのは正しかったとの認識が広がった。

◇◇

 他方、個人のアイデンティティーに関する問題では、民主党は一枚岩にはなりきれない。人種を問わない社会を目指す旧来のリベラル派と、そうした社会こそ構造的な人種問題を微妙に助長すると考える若い世代は一時的に「休戦」しているが、不安定だ。8月の全国党大会は、穏健派からも急進左派からも反発が出ないよう慎重に配慮された。バイデン氏のペンシルベニア州の演説も、はっきりと穏健派を意識したものだった。

 いずれにせよ、民主党がこの問題を取り上げるだけで戦略的な負けとなる。バイデン氏が選挙までの2カ月間、「警察予算を削減しろ」や「正義なくして平和なし」のスローガンはどちらもそう過激な意味ではなく、民主党が掲げたものでもないなどと説明に追われれば、共和党の思うつぼだろう。

 選挙はしばしば「経済を最もうまく回せるのは誰か」に対する答えを巡り、争うものだといわれる。実際は問いかけ自体を競う場だ。バイデン氏は「誰がコロナ禍を克服できるか」、トランプ氏は「誰が地域の安全を守れるか」をそれぞれ有権者に問おうとしている。どちらがより差し迫った問題かさえ見えにくくなった現状は、トランプ氏に勢いがついていることを物語る。

(3日付)


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