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〈人間主義の哲学の視座〉
第2回 対談集『21世紀への対話』に学ぶ?
テーマ 利他
トインビー 今日の状況はたしかに危機的ですが、しかし私の信ずるところでは、われわれのもつ自由も、人為的な諸悪を退治するに足る、十分大きなものです。とはいっても、この自由も絶対的なものではありません。われわれは自らの宿命を向上させることはできても、宿命自体を捨て去ることはできないからです。
池田 つまるところ、問題は人間が自分自身の宿命をいかに転換し、向上させていくかにあるわけです。これには、人間生命に内在する利己性や種々の欲望にどのように対処するか、ということが含まれるでしょう。このことからも、人類が生き延びるためには、科学とともに、どうしても宗教が必要であることが明らかになってくると思います。
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池田 そして、その宗教とは、一人の人間生命は地球よりも重く、しかもこの生命の尊厳は、自然との調和によってはじめて維持できるという原理を、一人一人に実感させることができる宗教でなければならないと思います。
トインビー その通りです。人類の生存に対する現代の脅威は、人間一人一人の心の中の革命的な変革によってのみ、取り除くことができるものです。そして、この心の変革も、困難な新しい理想を実践に移すに必要な意志の力を生み出すためには、どうしても宗教によって啓発されたものでなければならないのです。