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【中外時評】迫られる米中関係の再定義
客員論説委員 土屋大洋
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(7ページ)
2020/8/26 2:00
中国外交部の報道官は、日本に対しても米国に対しても常に強い言葉をぶつけてくる印象がある。しかし中国の人々は、以前の中国外交が軟弱だと外交部を批判していたそうだ。外交部はカルシウムが足りないから軟弱なのだとして、カルシウムの錠剤を送りつけてくる人もいたらしい。
他国に挑発的な言動をする「戦狼(せんろう)外交」とは、人気の中国映画にちなんで付けられた通称だが、中国の人々は昨今の中国政府の強気の外交姿勢に留飲を下げているという。
中国外交部が特に強い戦狼外交を始めたきっかけは、新型コロナウイルスの出所をめぐる米中の論争だ。中国・武漢で最初の流行が始まったため、武漢にある2つの研究所から漏れたのではないかと疑われた。すると中国側は、米中央情報局(CIA)が持ち込んだウイルスだと主張し始めた。どちらも証明されていないにもかかわらず、両者とも堂々と主張する外交合戦になっている。
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今回注目すべきは、単純な中国への批判ではなく、中国の「政府」と「共産党」を狙い撃ちしていることだ。例えば、レイ長官の演説では「はっきりさせておきたい。これは中国の人々についてではなく、中国系米国人についてでもない」「中国からの脅威について私が言う場合、中国政府と中国共産党を意味する」と明言している。
これらの演説は、中国の政府や共産党と国民を切り離し、人々が自国政府に対して批判的な目を持つよう促すパブリック・ディプロマシー(対世論外交)の側面を持つ。
どうしても11月の米大統領選挙向けの動きではないかと見えてしまう。しかし演説に隠されたメッセージは、米国民が堂々と選挙で大統領を選んでいるのに対し、中国の指導者はきちんと中国の人々を代表しているのだろうかという問いかけだろう。
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同長官は8月5日にも記者会見し「クリーンネットワーク計画」の拡充を発表した。すでに中国製の通信機器を排除する動きは進んでいたが、今度は米国民が使うアプリやクラウドサービス、さらには海底ケーブルなどからも中国の影響を排除するという。ワシントンDCではかねて、次世代通信規格「5G」の次は海底ケーブルだと噂されていた。それが現実になった。
中国外交部の報道官はこれに対して、国家権力を使った中国のハイテク企業弾圧だと反発した。
トランプ米大統領は、中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米事業売却か停止も求めている。個人情報が抜き取られている懸念があるという。
言葉だけの外交戦から、実際のビジネスへの影響がさらに拡大している。技術覇権が国際政治経済における覇権にもつながることから地政学、地経学、そして技術も含めたジオテクノロジー(地技学)への関心が高まりつつある。
米中の技術的デカップリング(切り離し)をめぐる議論は、おそらく11月の米国大統領選挙を終えても残り、米中関係を再定義するだろう。
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慶応大教授。月1回掲載します。