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【Asiaを読む】高官訪台に波紋 米中の行方は
元NATO欧州連合軍最高司令官 ジェームズ・スタブリディス氏
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(8ページ)
2020/8/22 2:00
米国のアザー厚生長官が8月9〜12日、台湾を訪れた。米国にとって、1979年の断交後で最高位となる閣僚の派遣となった。訪問の表向きの理由は、新型コロナウイルスの感染対策をうまく進めた台湾との関係強化だが、本当の狙いは中国を激怒させることにあるとさえみている。
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私は2018年8月、訪台し、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統らと会談した、蔡政権は、中国本土との微妙なバランスを維持しようとしているという印象を受けた。台湾は、公然と独立を主張しているわけではないだろう。独立は、中国にとって越えてはならない一線といえる。
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中国の反応は極めて直接的で、武力行使もちらつかせ報復措置も示唆している。トランプ政権がティックトックなどとの取引を禁止する計画を進めていることなどから、中国の対応はかなり大規模なものとなるかもしれない。
予想される対応としては、米企業との取引禁止などがある。コーヒーチェーンのスターバックスからスポーツ用品のナイキ、航空機のボーイングに至る米企業への制裁があるかもしれない。IT(情報技術)大手のフェイスブックやツイッターといった企業や経営者、政府・軍関係者へのサイバー攻撃も考えられる。
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中国の指導者は、米国の一連の行動が中国で最初に新型コロナが流行したことへの「罰」であり、大統領選を前にトランプ氏の支持基盤を勢いづけるのが狙いだと解釈しているとみられる。中国は選挙でバイデン政権が誕生してもトランプ氏が再選されても、選挙後に米国の反中姿勢は弱まる可能性を考えつつ、長期戦に備えるだろう。
現状の深刻さの程度は、米中協議の第1段階の合意の行方が示すことだろう。トランプ政権か中国が合意を破棄するようなことになれば、米中関係が根本的に悪化していることがわかるはずだ。
米中関係が根本的に悪化すれば、コロナ危機による落ち込みから回復しようとする世界経済に深刻な打撃を及ぼす。今回の米高官の台湾訪問がさほど重要でなくみえても、大きな結果を伴うことになる。次に動くのは中国だ。
関連英文はNikkei Asian Reviewサイト(https://asia.nikkei.com)に
James Stavridis 元米海軍大将。2009〜13年北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官。米タフツ大フレッチャー法律外交大学院長を経て、カーライル・グループ所属。