【大機小機】この冬が来る前に
日本経済新聞 朝刊 マーケット総合2(17ページ)
2020/8/18 2:00
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では、一般市民は何を頼りにすればいいのだろう。死亡率が低く、日本人にはファクターXがあるとして、行動制限に批判的な人もいる。しかし、この議論は自分が無自覚なまま人にうつしてしまう可能性と、ひとたびかかればインフルエンザとは比較にならないぐらい医療側に負荷をかけるリスクを無視している。
やはり、ワクチンが整うまで、できる限り多くの人が必要な時に検査を受けられる体制をつくるしかないのではないか。政府は検査対象拡大について正確性、コストの両面で消極的だが、経済活動を継続するには「3密回避」などの個人レベルの行動規範だけではなく、もう少し医学的に安心できる材料が欲しい。
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小林慶一郎東京財団政策研究所研究主幹は当面「1日10万人のPCR検査」を提言する。月300万人、平均して国民の2.5%程度が月1回検査を受ける計算だ。これで十分か議論はあるだろうが、小林氏の試算ではコストは多くても年2兆円程度。19年度の消費税収のざっと1割、税率で1%分ぐらいである。
厚生労働省が導入した接触確認アプリの普及を進めるべきだとの声もある。今は個人情報保護の観点から「端末に入れたい人だけがインストールするオプトイン方式」だが、コロナについては「外したい人だけがアンインストールするオプトアウト方式」とするのも一考に値する。その方が利用される確率が高まる。
今年の冬はコロナの次なる波と季節性インフルエンザの双方に向き合わなければならない。備えあれば憂いなし、となるか。政府の意志が試される。
(三剣)
「端末に入れたい人だけがインストールするオプトイン方式」
「外したい人だけがアンインストールするオプトアウト方式
☆用語解説【オプトイン/オプトアウト】
「オプトイン」とは、ユーザーが、企業からの情報の受け取りや自らに関する情報の利用に関して、あらかじめ許可を与えること。反対に「オプトアウト」は、事前確認なく送られてくる広告やメールに対して、ユーザーが不要の場合のみ情報の受け取りや個人情報の利用を拒否することです。
解説
「オプトイン」と「オプトアウト」の語源は、英語の“opt in”と“opt out”。“opt”とは、動詞で“選ぶ”や“決める”という意味です。ユーザーの意思がベースとなる仕組みで、臓器提供の意思表示や、集団訴訟への不参加の申し出など、経済、医学、司法など幅広い分野で使われている言葉だったりします。マーケティングの分野では、広告メールや、インターネット上での個人情報の取得や利用などを、ユーザーの意思に基づいて行う仕組みのことを指します。
ちなみに、建物などの持ち主に事前の確認なく、すべてのストリートビューを掲載しているGoogleストリートビューは「オプトアウト」の一例です。写真の掲載をしたくない場合、拒否の意思を申し出れば削除される仕組みになっています。