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【グローバルオピニオン】グローバル化、改革に焦点
スペインESADE世界経済・地政学センター長
ハビエル・ソラナ氏
日本経済新聞 朝刊 オピニオン2(7ページ)
2020/8/6 2:00
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グローバル化は多くの敗者を生み出した。こうした現象は、米国で顕著にみえる。低所得層の平均所得は、1980年から2010年の間に減少した。自動化による影響が見過ごされがちで、生産拠点の海外移転だけが原因ではないものの、重要な要素なのは間違いない。
しかし、我々は、生産のグローバル化を完全に修正しようとする誘惑にあらがう必要がある。全般としては、グローバル化の恩恵は明らかで、世界の多くの人を貧困から救った。グローバル化による破壊ではなく、改革に焦点を合わせるべきだ。
まず経済統合を推進する組織は、食品など生活必需品を含む戦略物資の地域におけるバリューチェーンを強化する必要がある。戦略物資の不足を回避するには、企業が「ジャストインタイム」方式の生産から、供給の確保を優先しようとする「ジャストインケース」に移行すべきだろう。
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パンデミックなどのリスクを予防するには、世界保健機関(WHO)に対し、拘束力のある制裁を科せるような権限を与えることが欠かせない。トランプ米大統領のWHO脱退の動きは、逆方向だ。政策立案者は、加盟国の分担金を増やすことによる財政強化など、WHOの改革を早急に検討すべきだ。環境問題に関しては、気候変動への対策が世紀の戦いであることを認識しなければならない。脱炭素を進めることを無視した経済対策は、非生産的だ。
新型コロナのワクチンの公平な分配を妨げ、将来の供給を独占しても、パンデミックが健康と経済に及ぼす脅威を終わらせることはできない。保護主義や内向きの政策を選択することは、今日の問題を昨日の方程式で解決しようとするようなものだ。
グローバル化についての正当ともいえる不満は、大きな恩恵を思い起こすだけでは、和らげることができない。グローバル化を後退させるのではなく、より良く構築するための冷静な試みが、成果につながるだろう。
((C)Project Syndicate)
Javier Solana 北大西洋条約機構(NATO)事務総長、欧州連合(EU)共通外交・安全保障上級代表など歴任。スペインのビジネススクールESADEで現職。