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2020.7.27-5(4)

2020年07月26日 (日) 10:27
2020.7.27-

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〈オピニオン〉黒人暴行死への抗議デモが全米に拡大

渡辺靖 慶應義塾大学教授
異なる“正義”が対立する分断社会

――一昔前と違い、人種問題の構図は「白人と非白人の対立」に単純化できないように思われます。
  
 渡辺 ええ。例えば、同じ白人、同じ黒人でも、大学卒業者かどうかで考え方や世界観がかなり違います。所得格差、ジェンダー(性差)の捉え方など社会の分断線は細分化しています。
 BLM運動が掲げる社会正義とは正反対の理念をもち、多文化主義や移民に非寛容な白人ナショナリスト(白人至上主義者)の動きも活発です。
 米国では近年、自分の属する人種、政治信条、宗教などを最優先して、「私たちと彼ら」という態度を鮮明にし他のグループと敵対し合う「トライバリズム(政治の部族化)」が新しい現象として起きているのです。

多様性を警戒する勢力
 ――渡辺教授は白人ナショナリストと呼ばれる人々に直接会い、取材した内容をまとめ、新刊『白人ナショナリズム』(中公新書)を5月に出版しました。
  
 渡辺 白人ナショナリストは、白人保守層の中で、最も過激で先鋭的な人々です。彼らは共和党、民主党を問わず、ポリティカルコレクトネス(政治的な正しさ)に覆われている首都ワシントンDCの主流派を強く批判しています。「多様性」の尊重は、彼らには「白人虐殺」を意味するコードワード(隠語)として語られています。米国の白人は居場所を喪失したと感じており、リベラル(自由)な社会秩序の「被害者・犠牲者」という意識が強いのです。
 彼らは1950年代の社会を理想化しています。経済が繁栄していた当時、分厚い中間層が存在し、その圧倒的多数を占める白人・クリスチャン中心の社会秩序が維持されていました。
 国際的には、第2次世界大戦で欧州各国や日本が焼け野原となったため、米国は自由世界を主導し、他国から尊敬されていました。しかし、その後、移民の流入や自由貿易、多国間枠組みなどグローバリゼーションがそれを破壊した、と。大量の移民が労働者の仕事を奪い、工場の海外移転によって産業は空洞化。社会・文化が変容してしまったということです。
  
 ――トランプ大統領の世界観とは、いかなる共通点があるのでしょうか。
  
 渡辺 トランプ大統領が白人ナショナリストかどうかについては、見解が分かれますが、大統領の言動は、白人ナショナリストの多くが抱く世界観につながる部分があるといえます。
 例えば、どの政治指導者も自国優先の政策を実施するのは当然ですが、トランプ大統領の「米国第一」には、米国及び米国民が搾取されているという強烈な被害者意識があるのです。
  
 ――BLMは今や社会運動の主流の一つとなっていますが、白人ナショナリズムの現状については、どうでしょうか。
  
 渡辺 BLM運動と同様、白人ナショナリズムの担い手も若い世代が中心になっています。カリスマ的な人物はいますが、組織の指導的役割を果たしているわけではありません。また一部は過激な行動に出ますが、多くはそうではない。オンライン上で、過激なメッセージをパロディー化して発信するなど、若者の共感を得ようとする工夫も見られます。
 ある世論調査(2018年)によると「白人ナショナリズム」を強くまたは多少なりとも支持すると答えた人はわずか8%だった一方、「現在、米国では白人が攻撃されている」という指摘に、強くまたは多少なりとも同意すると答えた人は43%に上りました。つまり、白人ナショナリストの抱く感覚は今、多くの人々に共有されているといえます。
 私自身は白人ナショナリストの考え方に賛同しているわけではありませんが、米国の人種問題を考える際、どうしても少数派への差別が基本的な視点になりがちな中、白人至上主義者の思いや感覚を知り得たのは、異形のトランプ政権、アメリカ社会の行方を理解する上で、とても役立ちました。



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