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2020.7.25-4

2020年07月24日 (金) 12:53
2020.7.25-

【FINANCIAL TIMES】三極化するデジタル経済
グローバル・ビジネス・コメンテーター 
ラナ・フォルーハー

 トランプ米大統領はここ数年、多くの過ちを重ねてきたが、その中でも最も深刻な過ちの一つは、中国とのテクノロジーおよび貿易を巡る戦争を米国単独で戦おうとした点だ。

 監視国家の道を進む中国が競争や個人のプライバシー、自由民主主義に脅威をもたらしつつあることに欧州も米国と同様、懸念を深めている。トランプ氏は欧州と連携し、中国と貿易のあり方などで対立してきた諸問題の解決やデジタル関連のビジネスをどう統治するか新たな世界的な枠組みを構築する必要性があるとして、中国に圧力をかけていくこともできたはずだ。

 ところがトランプ政権は世界中を一気に敵に回し、米国が敵対する国にも、同盟国に対しても構わず関税を引き上げてきた。その結果、デジタルを巡る動きは米国、欧州連合(EU)、中国がそれぞれ独自路線を追求し、三極化するに至っている。



 EUの欧州委員会は、アイルランド政府が米アップルに与えた143億ユーロに上る税優遇は違法だとして同国に追徴課税するよう指示していた問題で、EU司法裁判所の一般裁判所は15日、この指示を取り消す判断を示した。アップルはこの税優遇から何年も多大な恩恵を受けてきた。各国が独自に設ける税制は法的には全く問題ない。だが各国が企業を誘致しようと税優遇で競うと最も低い税率を巡る競争となり、企業は自社に最も有利な国を探す事態となる。これは一種の「コモンズの悲劇」(編集注、誰でも自由に利用できる共有資源が管理者不在ゆえに過剰に利用され弊害が起きること)といえる。特に今、巨額の債務を抱える政府にとっては新型コロナウイルス禍対策に税収が必要なだけに、税制のあり方は重要だ。

◇◇

 米国とEUは、消費者の個人情報を収集し利益を得ている巨大IT企業にどう課税するかでも対立している。世界がモノ中心の経済でなくなるに従い、EUはIT大手を規制する枠組みを築きたいと考えている。だが米国は、欧州のハンドバッグメーカーなどEUの多国籍企業も顧客の個人情報を収集しているわけで、米消費者から吸い上げたデータについては米国でも納税すべきだと主張、仏企業に新たな関税をかける可能性をちらつかせている。

◇◇

 11月の米大統領選で民主党のバイデン候補が勝利しても、技術を巡る米中分断の動きは変わらないだろう。バイデン氏は最近の声明で、米国のイノベーションを促進し、サプライチェーンをもっと安全で短くしたいと表明した。

 しかしバイデン氏はトランプ氏とは異なり、米国が同盟国と協力する必要性は強調した。貿易と技術に関する新たな枠組みを米国とEUが共に築くことを彼は最優先すべきだ。それを見据えて、メルケル独首相とマクロン仏大統領は今から、その枠組みの対象とすべき項目をリストアップしておくとよい。

◇◇
 
 EUには今、かつてない交渉力があるといえる。米国は同盟国の協力なくして5Gで中国に対抗できないし、バイデン氏が次期大統領になれば、トランプ氏がこれまでEUとの関係を傷つけてきた埋め合わせとして好意的な姿勢を示す必要にも迫られるからだ。

 欧米間の新たな合意ではデジタル経済にふさわしい新たな枠組みを築くべく、まず互いに関税を撤廃するのが望ましい。その枠組みは、5Gシステムから中国のファーウェイを排除し、米クアルコムやフィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンを中心に構築すべきだ。EUと米国の間で互いに個人情報を守る協定を結ぶことも必要だ。個人情報の収集で利益を得る企業から各国が税を徴収できるデジタル課税の導入も必要だ。最後に、競争や透明性を確保するための独立した機関の設立も重要だ。

 これらすべてで米国とEUが合意するのは非常に難しい。だが両者が協力することは、デジタル分野の分断がますます進む中、米国とEUが中国に対抗していく上で強力な足がかりになることは間違いない。(20日付)


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