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2020.7.17-4

2020年07月16日 (木) 22:38
2020.7.17-

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◎【あすへの話題】AI 将棋棋士 谷川浩司

 AI(人工知能)の知恵は借りないまま現役を退くことになるか、と思っていた時期もあったが、昨年パソコンを買い換えたのを機に、将棋ソフトも導入することにした。

 主な活用法は、自分の公式戦の棋譜を精査してもらうこと。それはもう遠慮なく、多彩な手を提示してくれる。

 なるほどと感心することもあれば、理解不能だったり、これは人間には指せないと思うことなど、様々である。

 思えば、私の四十数年の棋士人生は、研究方法の進化の歴史でもあった。

 10代の修行中は、公式戦の棋譜を手書きで写していた。20代になってコピーが気軽にできるようになり、30代には棋譜データベースで検索が可能になる。

 40代は棋譜中継でリアルタイムで検討できるようになり、50代はソフトを取り入れる棋士が徐々に増えた。

 昔は棋士にはコーチはいなかったのが、今はピッチングフォームやバッティングフォームをチェックしてもらえる。そう考えればソフトはありがたい存在である。

 ただ、ソフトは現局面での最善手を模索するので、現局面に至るまでの手順や流れを重視する人間の感性とは、根本的に相いれない部分もある。

 ソフトを導入して1年弱だが、こだわりもある。それは、自分でまず考えてからソフトの意見を聞く、という点である。

 必然的に、自分が指した将棋が圧倒的に多く、ソフトの出番は意外に少ない。

 有効活用をしていない気もするが、アナログ世代のささやかな抵抗ということで理解していただきたい。


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