【大機小機】西太平洋先進国、復興の主役
新型コロナで世界経済が失速するなか、西太平洋先進国が浮上しつつある。中国は強力な都市封鎖で感染拡大を抑え込むと同時に積極的な財政出動でいち早く景気回復が始まった。だが、農業とサービス部門の回復の遅れに加え、米中貿易戦争で経常赤字に転落した。資本流出リスクを抱え、低空飛行が続きそうだ。
中国に代わる牽(けん)引車として期待された新興7カ国(インド、ブラジル、ロシア、メキシコ、インドネシア、トルコ、南アフリカ)は感染爆発で死者が15万人を突破した。生産は29%減少、リーマン・ショック時を大幅に上回る落ち込みだ。経済成長に医療や社会保障制度が追い付かず、「中所得国の罠(わな)」にはまった。
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牽引車不在のなかで西太平洋先進国・地域(日本、韓国、シンガポール、台湾、オーストラリア、ニュージーランド)が感染症対策先進国として注目を集める。感染率は世界の4分の1、死亡率11分の1で日本を除くと景気の落ち込みも軽く、回復も早そうだ。
世界が感染第2波に身構えるなか、西太平洋先進国の出番だ。日本は強力な感染症対策機関を立ち上げ、国民の命を守ると同時に、これらの国々と連携して感染症に強い保険医療システムを提供することで世界に貢献すべきだ。グローバル化に逆風が吹くなかで新興国に市場を広く開放して自由貿易体制を守ることも必要だ。時代の大変革期を迎えて人的投資を拡大するなど、コロナ後の「より良い復興」(Build Back Better)の牽引車の役割を期待したい。
(富民)