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◎第2回 日米同盟の活力とは
ジョセフ・ナイ米ハーバード大特別功労教授
豪印と協力し中国抑止
米国が日米同盟に背を向けて中国との関係をより重要視しているとの疑念を耳にしてきた。絶対にない。日米はともに民主主義国で、中国が恐らく民主主義国になることは当面、ないはずだ。民主主義国同士は社会全体を通じて信頼が醸成される。米国は日本を「脅威」とはみなしておらず、将来も変わらないだろう。
安全保障上の関係は維持されている日米だが議論はある。在日米軍は沖縄県に集中し、県民の負担を軽減する協力を考えるべきだ。尖閣諸島の問題も重要になっている。中国が領有権を強く主張するようになってきた。オバマ前大統領は来日した際、米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条に尖閣諸島を含むと言明した。日米はともに課題を乗り越えてきた。
米国が懸念しているのは中国の行動だ。中国に対する警戒感は以前からくすぶっていたが、とりわけトランプ政権で強まった。中国共産党と強いつながりを持つとされる華為技術(ファーウェイ)のような企業に米国の次世代通信規格「5G」の通信設備の建設を任せてはならないとは思うが、米中の新しい冷戦といった議論に陥ってはいけない。日米にも中国にも不利だ。均衡の取れた対中政策を実行することが重要だ。
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中国が他国に医療支援する「マスク外交」で善意を強調し、南シナ海やインドとの国境問題を主張するのは間違っている。自国民に向けたメッセージの発信だろうが、外交政策上は傷を付けている。日米が対中関係に厳格な姿勢を示しているオーストラリアやインドと外交で協力すれば、中国のこういった行動を妨げることができるはずだ。
日米が密接に協力して中国への抑止で役割を果たす一方、中国とは新型コロナの感染防止や気候変動など重要な課題で協力していく必要がある。米中は今後数年間難しい関係が続くと思うが、日米が協力すれば中国は責任ある大国として振る舞うようになるだろう。