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◎声明「コロナ禍に立ち向かう――危険と機会」
戸田記念国際平和研究所 ケビン・クレメンツ所長
パンデミックで露呈した現行システムの限界――「人間の安全保障」に基づく優先課題の見直しが急務
戸田記念国際平和研究所(創立者=池田大作先生)のケビン・クレメンツ所長は、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)のパンデミック(世界的大流行)を踏まえ、所長声明「コロナ禍に立ち向かう――危険と機会」を発表した<4月28日配信「Policy Brief(政策提言)」No.71>。声明では、今回のコロナ禍によって軍事的な「安全保障」の枠組みの限界が明らかになったと指摘。疫病や気候変動、貧困など生存に対する現実の脅威を見据え、「人間の安全保障」の概念に基づいて国家と世界の優先課題を再検討し、多国間プロジェクトを再活性化させることを訴えている。同声明の要約を紹介する。
新型コロナウイルスの被害は、世界のテロ行為による被害をはるかに上回ります。それにもかかわらず、諸国は過去20年間、健康への脅威より軍事的脅威に、人間の安全保障より国家の安全保障に、より多くの資金を投じてきました。今回のパンデミックは、人間の生存に対する現実の脅威を克服するための、政治的・経済的優先順位を決定する唯一無二の機会を提供してくれているといえます。
●何が脅威か再考を
第一に、21世紀におけるリスク、脅威の性質の見直しを始める必要があります。
今回のコロナ禍によって、国家は、健康、世界人口、集団移民、難民、気候変動、不平等などよりも軍事的脅威を上位のリスクに据えることは難しくなりました。国民と政策担当者は、福祉と生存に対する脅威の性質を再考することが不可欠であり、特に「人間の安全保障」の概念に基づいて検討することが重要になります。
コロナ禍で浮き彫りになったのは、医療崩壊、気候変動、貧困撲滅に対して無力であることが明らかな「軍事的国家安全保障」という枠組みの限界です。核兵器や通常兵器の軍備拡大競争は、今日の世界的問題を解決できない。それどころか、それにより悪化し、複雑になるだけです。
●多国間協力が不可欠
第二に、これら複合化された脅威のいずれに対しても、一国のみで解決することは困難であり、地域的・世界的な協調を必要とします。このため、コロナ禍後の世界では多国間プロジェクトを再活性化させる必要があるということです。
国家と国民は世界に関わる意思決定のために、国際機関の効率、有効性、関連性の改善に重点を置く。とともに、国家や世界の政治指導者は、さまざまな国際機関の戦略や目標の有効性と関連性について、「国益」のためという狭い概念ではなく、「人間」にとってより良いものにするために注意を向けなければなりません。
●新たな経済モデルへ
第三に、このパンデミックが、国と地域と世界の経済活動に根本的な変化をもたらすことは明らかです。
世界の労働者33億人のうち、合計81%において、職場が全面的または部分的に閉鎖されました。グローバル・サウス(南半球に多い発展途上国)の経済に対するパンデミックの影響の全体像はまだ確認されていませんが、最悪の影響を受けるリスクがあるとの指摘もあります。
●地域共同体が重要
第四に、回復力を持つ社会制度を確実に整備するためには、コミュニティーの再活性化と社会的連帯(ウイルスに対応する中で生まれたもの)を基盤とすることが不可欠です。
●新たな世界を築くチャンス
最後に、独裁的な指導者がこのパンデミックを利用し、非常時の権威主義的権力を恒久的に導入する事態を防ぐことが不可欠です。
この危機を通じて、私たちはあらゆる分野で進歩的な政治変革を実現し、誰もが母胎にいる時から墓場までの安全を保障され、未来が投げ掛けるあらゆる危機に対応できるだけの医療制度を構築しなければなりません。
このたびのパンデミックは、恐怖と混乱と不安をもたらしましたが、新たなビジョンを築くための機会――より共感的、平等で、恐れが少なく、汚染が低減され、自然と調和した世界を築く唯一無二の機会も提示しているのです。これは、創造的な可能性が開かれた瞬間です。今回の世界危機がもたらした一つの結果として、今世紀の大きな課題に応えられるだけの世界を共に創出していこうではありませんか。
◎評伝「民衆こそ王者」 第14巻が発刊
トインビー博士との対話篇
博士は80歳の時、41歳の先生との対談を熱望。2度の世界大戦を経て鍛えられた博士の史観は、創価学会の発展を「世界的な出来事」として捉えていた。
混迷の時代に希望の光を送る二人の語らい――その知られざる歴史に迫る。