◎【Asiaを読む】TPP11参加、中国の本気度
米アジア・ソサエティー政策研究所副所長
ウェンディ・カトラー氏
TPP11参加国は、中国が関心を示すことで、トランプ大統領が米国の参加を考え直す可能性があるという幻想を抱くべきではない。むしろ態度を硬化し、中国の不公正な貿易慣行を是正できない、実効性のない協定だとしてTPP11批判を強める懸念もある。
TPP11参加国は19年1月、新規に参加を希望する国・地域との手続きを正式に決めた。TPP11の既存のルールを順守することを求め、包括的な市場アクセスの確約を呼びかける内容といえる。
こうした要件を満たすのは、中国にとって難題になるだろう。
◎【Deep Insight】「幸福な職場」という挑戦
「ウェルビーイング(幸福)」
「私はいま、かつてなく多くの従業員と頻繁に話せる。疑問があれば尋ねてほしいし、心配事は共有してほしい」
従業員の思いを知り、力を出せる職場の再設計はコロナ時代の経営者の仕事だ。
「会社は従業員の声を聞こう」
テレワークを機に労働の時間管理は限界を迎え、従業員ごとの役割や責任が明確化していく。成果に応じフェアに評価する流れだ。
会社と従業員は対等な関係に向かい、会社も働く人から選ばれるよう、従業員について理解する必要がある。
統合集約型から多様分散型へ――。
自分が主に通うオフィスと自宅以外に働けるところがほしいとの回答は9割。
「分散」「選択の自由」が次世代の職場のキーワードだが、ハード面の備えだけでは足りない。
従業員が離れ離れで働く状況が増えれば、お互いのようすが見えにくくなる。心身の健康をケアする手立てが欠かせない。
もう一つ、ソフト面から重要なのが従業員のスキル取得を助ける環境を整えることだ。
米コーナーストーンオンデマンドによると、同社が企業の従業員に提供するネット学習サービスは、コロナが深刻化した3月に日本を含む世界で利用が跳ね上がった。テレワークや健康管理を学ぶコンテンツが人気を集めた。
働く人に要求されるスキルは次々と変わる。能力アップやキャリア形成を後押しできる企業でなければ人材の求心力を失っていく。
近年、世界的なテック企業の気候対策やAIの軍事利用を巡り、会社の方針に納得がいかないと従業員が反発の声を上げる出来事が相次いでいる。15日には米国で連邦最高裁が職場でのLGBT(性的少数者)差別は違法との判断を示した。日本企業も対応が遅れているテーマだ。対話を通じ、働く人と会社の波長を合わせる余地がまだまだあるようにみえる。
わが社は従業員のことを真剣に考えているだろうか……。コロナ禍で根元的な問いにぶつかった人が多いかもしれない。敏感に反応できない会社は振り落とされる。