◎歴史学者エマニュエル・ドット氏(読売5.31)
●権威・規律が生んだ違い
軽重の違いは文化人類学的に説明できます。重度の国には個人主義とリベラルの文化的伝統がある。軽度の国は権威主義か規律重視の伝統です。中国もそうです。概して権威主義・規律重視の伝統の国が疾病の制御に成功しています。
●「世界の工場」に依存
トランプ政権を西欧は民主主義の脅威と非難してきましたが、米国の民主主義は機能している。抑制と均衡は守られ、社会は民主的に組織されています。米国は依然として世界一の民主国家です。
中国は最先端の情報技術を国民の監視に最大限活用する新たな全体主義国家です。14億という人工規模はあまりに過大です。
米国が世界一の座を守りたいのなら、中国を打ち負かすしかありません。武力ではなく、外交力と経済力による圧倒です。戦争は誰も望みません。
先進諸国は工場を中国に移し、中国はウイルスを先進諸国にうつす、中国はマスクや防御具を存分に生産でき、先進諸国はそれができない――。
●脱中国を図るとき
中国経済の10年来の問題は過度の輸出型から脱せないことです。内需向けに転換できない。
先進諸国が協調して中国からの輸入を減らせば、中国は内需への転換を迫られる。
「21世紀のキッシンジャー」なら中国に対し優位に脱すためにロシアと和解するはずです。ロシアは応じます。真の脅威は隣の中国ですから。
一つ断言できるのは、日本をふくめて先進諸国は今、米中対立を巡る自身の立ち位置を決めなければならないということです。