◎ドン・キホーテ
第6章 ドン・キホーテが、
姪と乳母を相手に一くさり。
物語中、
もっとも重要な章の一つ。
乳母「旦那様、いい加減になさいませ。足に地を付けて、そうです、しっかりと地に生やしてお屋敷におとどまり下さい。冒険が何です。野や山を彷徨(さまよ)い歩くのは、成仏できない亡霊のすることです。………」
「また、また、伯父様」と姪。「遍歴の騎士なんて嘘っぱちよ。作り話ばっかり。史伝物語だって、火炙り、おっとっと、にはしないまでも、どれもこれもいたんの罪人と同じだから、ぱっと見分けがつくように、黄色い頭巾をかぶせましょう。十字架も担がせるの。人の道を迷わす極悪と破廉恥の印よ」
ドン・キホーテ
「悪徳の道は幅が広くて歩き易いが、果てには死が、滅亡がある。それに対して、美徳の道は、狭く、険しくて、果てには、生命がある。終わりの来る生命にあらず、尽きることの無い生命だ」
これは茨(いばら)の道
行けど届かぬ
不死不滅の高殿(たかどの)にいたる道。