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開目抄
第12章 一仏二言・難信の相 0191.01〜0192.07
現代語訳
しかれども、爾前の諸経もまた仏の実語である。大方広仏華厳経にわく「如来の知慧を大薬王樹にたとえてこの大薬王樹は唯二迦処において生長して利益を施すことができない。いわゆる二乗の無為広大の深い坑に堕つるのと仏道修行の善根を壊り正法を受け持つことのできない謗法一闡堤の衆生の大邪見・貪愛の水に溺れる処である」と。この経文の心は、雪山と申す山に大樹があり無尽根となづけて大薬王樹と号す。世界中のもろもろの木の中の大王である。この木の高さは十六万八千由旬である。世界じゅうの草木は、この木の根ざしで、枝葉華菓の次第にしたがって華菓がなるのである。この木をば仏の仏性にたとえられ、一切の衆生をば一切の草木にたとえる。ただしこの大樹は、火の孔と水輪の中には生長しない。二乗の心中をば火坑にたとえ、一闡提人の心中をば水輪にたとえたのである。この二乗と一闡提は永久に成仏することができないと申す経文である。