徴(しるし)前に顕れ災い後に致る
悪の根を断て!
客殊に色を作して曰く、……就中法然聖人は幼少にして天台山に昇り十七にして六十巻に渉り並びに八宗を究め具に大意を得たり、……然れば則ち十方の貴賤頭を低れ一朝の男女歩を運ぶ、……而るに忝(かたじけな)くも釈尊の教を疎(おろそか)にして恣(ほしいまま)に弥陀の文を譏(そし)る何ぞ近年の災を以て聖代の時に課せ強ちに先師を毀(そし)り更に聖人を罵(ののし)るや、毛を吹いて疵(きず)を求め皮を剪(き)つて血を出す昔より今に至るまで此くの如き悪言未だ見ず惶る可く慎む可し、……
主人咲み止めて曰く……就中法然は其の流を酌むと雖も其の源を知らず、所以は何ん大乗経の六百三十七部二千八百八十三巻・並びに一切の諸仏菩薩及び諸の世天等を以て捨閉閣抛(しゃへいかくほう)の字を置いて一切衆生の心を薄(かろ)んず、是れ偏に私曲の詞(ことば)を展べて全く仏経の説を見ず、妄語の至り悪口の科言うても比無(ならびな)し責めても余り有り人皆其の妄語を信じ悉く彼の選択を貴ぶ、……爰(ここ)に知んぬ徴(しるし)前に顕れ災い後に致ることを、……汝疑うこと莫かれ汝怪むこと莫かれ唯須(すべから)く凶を捨てて善に帰し源を塞ぎ根を截(たつ)べし。
(立正安国論24-25頁)