“One Team, No Border” 会計税務を中心に企業のグローバル化を全力で支援しております。
SCS Global Consulting Group
総経理 太田 悠介
◎日本法人立替給与について中国から海外送金の留意点
親会社が出向者の生活費一部を日本従業員口座へ送金し、その後中国法人から回収することがあります。
課税リスクを減少させるため、日頃対応しておくことが必要となります。
当該海外送金の留意点などを記載します。
当該送金部分も含め、全額を中国で個人所得税申告する必要があります。
送金上限も個人所得税を控除後の手取りとなり、その範囲内で送金となります。
当該送金範囲内で必要金額を親会社等へ送金することで問題が解消されます。
シンプルに考えると、適切な納税が完了したもの(将来納税予定も含む)に限り海外送金を許可する、ということになります。
◎中国法人から送られて来る財務資料が不明な理由
通常日本では会計ベースで数字を作った後、税務ベースへ組替えしますが、
中国ではその逆、税務ベースで作った後、会計ベースへ戻す必要があります。
理由としては、中国では毎月税務申告があり当該税務申告は中国税務基準で申告することが求められるためです。
上記の通り、毎月の税務申告に負われているため、会計が疎かになりがちです。
それに加え、日本や海外の会計ベースでの考え方を加える場合、実務実施が困難になることも予想されます。
3)日本側が中国実務を理解していない
上記とは逆に日本側が本社基準へ合致させようと奔走し、中国実務では実現が困難な方法を提案することもあります。
例として、中国発票ベースの取引実態を変えることは実務上契約も絡むことであり難しい場合もあります。
上記を踏まえ、双方で相談しながら解決策を考えて行く必要があります。
<解決法>
本社主導で報告PKGや説明資料フォーマットを中国法人の実情に合わせ提案していく。
上記の通り、中国法人に日本管理方法を熟知している中国人などが不在の場合が多く、中国側からの提案の場合はうまくいかない可能性もあります。
場合によっては専門家を入れ進めて行くことも考えられます。
<上記により解消されること、メリット>
本社側:連結作業、各種資料作成、経営判断材料などの効率的な作成が可能、本社関与者の稼動時間の大幅な削減
中国側:日本報告時の質問の減少などにより、業務効率化&事業透明性の説明が可能
◎新基準:親会社への海外送金が損金計上できない可能性への対応
2015年3月18日に海外関連会社への支払い行為について、国家税務総局より2015年第16号が発表され、当該海外送金について税務上の費用(損金)として認めない場合がより明確化されました。
(会計上の費用計上は可能です)
以下、日本本社と中国子会社との関係を前提に説明します。
<従来の海外送金規制>
親会社へのコンサルティング費用支払について
従来の海外送金規制でもその実在性などが重視され、本当にそのサービスが親子間で存在したのか、という点が強くチェックされてきました。
<今回の規制>
上記に加え、そのサービス費用金額分の価値が本当に中国子会社に利益をもたらしたのか、という金額の妥当性もチェックされることになります。
中国子会社目線で妥当な金額のみを損金計上が可能ということになります。
<主要な規制ポイント>
下記は税務上の費用(損金)として認められません。
1)日本本社からの管理費用
2)中国子会社に利益をもたらさないと認められる労務費用、特許使用料
税務当局は10年間遡り、納税額の調整を実施できる権利を保有しています(企業所得税法実施条例123条)。
<企業側の準備>
海外送金にあたり、下記の準備をしておくことで当局からの指摘時に迅速に対応可能となります。
1)関連会社との契約書、請求書(押印付)
2)当該取引の実在性を示す書類や記録
3)請求金額の妥当性を示す検討書類