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妻を誘惑してくれ

2014年08月17日 (日) 21:47
妻を誘惑してくれ

第33章
小説
『藪を突っ突いて蛇を出した男』

フィレンツェは、トスカナの地にあって富み栄えることイタリア屈指の大都会。

「ご両人」
アンセルモは女性への関心が並以上で、ロタリオは狩猟を趣味としていた。

にもかかわらず、僕という奴は、一体どこまで贅沢に出来ているのか…まだ、もの足りず、満たされず、晴ればれせずうつうつとしている

誘惑されないような妻はありがたくない

…カミーラと恋の綱引きをしてくれ…

朝が顔をのぞかせた。
ペドロはきまりが悪く、恥ずかしくなった。
人影はないが、
我過てり、と己を恥じた。
心がひろくなり恥を知ったのは
人目があったからではない。
天知る、地知る、己知る。
あな、恥ずかしや、

かりに、天のお陰か幸運か、極上の金剛石(ダイヤ)の持ち主になったとしよう…鉄床(かなどこ)の上に置き、金槌(かなずち)で力まかせに叩くかい。…人も認める折り紙つきの美しい金剛石だとすれば、壊れるような危ない目に遭わせちゃいけない。

そもそも、女性は完全には出来ていない動物だから、行く先に、つまずいたり転んだりする邪魔物を置かず、のぞいてやるべきだ。

よく出来た女は、薔薇などの花が咲き競う庭園のように、番をして、大切にすべきだ。

女はガラス、
壊れるか壊れないか
試すなかれ、
転ばぬ前(さき)の杖。
壊れものは
壊れそうなところに置くな、
壊れたら、
元に戻らん。
これも忘れるな、ダナエの譬(たとえ)。

カミーラは、あら、わたしに隙があって付け込まれたんだわ、だからあんな厭らしいことを平気で言う、と受け取る。

うんざりかもしれんが、まあ聞け、みんな君のためだ、神が、地上の楽園で、人間の最初の父を造り給うたときのことだ。その父を、つまりアダムを、神は眠らせ、眠っている間に左側の肋骨を一本抜き取って、それで人間の最初の母イブを造り給うた、と聖書は言っているだろう。アダムは目を覚ますや、イブを見て言うね、
『これなるはわが肉の肉、骨の骨』

『これゆえに男は父母を離れ、二者は一体の肉となる』
…二つの異なる人格を同一の肉にしてしまうわけだから、よく出来た夫婦は凄いものなんだよ。魂は別々で二個なのに、意思は一個しか持たないってことが起きて、それを根拠に、妻の肉は夫の肉と同体であることになるから、妻が穢されたり傷ついたりすれば、害は夫の肉にも及ぶってことになる。

危ない橋だ。得るものはなく、失うものは計りしれず、…

アンセルモ
今のぼくは病気だってことだ。…とりあえず妻を誘惑してくれ。

おれは、死んで命を求め、
病気になって健康を、
牢につながれて自由を、
八方塞がって出口を、
裏切り者に誠を希(ねが)い求めている。
露ほどの幸せをお恵みあれと
乞えばいいのに、無理を言うから
運命の神は天主におうかがいをたて、
無いものねだりには、
有るものも恵まないことにした。


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