近年、中国では新規大学卒業者の就職難が大きな問題となっている。中国政府の高 等教育機関を充実させるとの政策の下、1999 年に大学定員が大幅に拡大された結果、 2003 年には前年の約 1.5 倍に当たる 212 万人もの大学生が卒業を迎えた(図表9)。 また、この年代は一人っ子政策が定着してきた世代であり、親も教育を重視するよう になったという事情もある。
このような卒業者数の急激な増加に加え、就職活動がSARS(重症急性呼吸器症 候群)の流行時期に重なったこともあり 15、 新規大学卒業者の就職難が大きな社会問 題となった。
その後も大学進学者は増加し、2007 年の大学卒業者数は 495 万人となっている。こ のうち、2007 年9月1日時点で就職が決まっていたのは 351 万人、就職率は 71%にと どまっている 16。 日本の新規大学卒業者の昨年度の就職率 96.3%と比較すると、中国 の厳しい就職状況をうかがうことができる。
この就職難の要因としては、卒業生の急増により、卒業生が求めるホワイトカラ ーの職業がなかなか見つからないということがある。これには、労働契約の期間が 1 3年の短期契約が主流で転職する者が多く、このため新規学卒者よりも即戦力 の中途採用が求められる傾向が強いという中国の雇用慣行が大きく影響していると 推測される。
また、卒業生本人とその両親の高望み志向も影響しているといわれている。大都市 での就職を望み、企業のブランド力、企業の立地条件、業務内容にこだわるあまり、 希望する条件に合った就職先がなければ無理をしてまで就職しないケースが多いとの ことであった。
企業側にとって買い手市場となっている現況は、大学卒業者の初任給を急激に押し 下げているといわれている。このように厳しい状況の中、企業で無給で働き、経験を 積むことで就職につなげようとする若者も出てきているとのことであった。
15 SARSにより経営に打撃を受けた企業が採用人数を減らすとともに、学生が就職活動自体を進めら れない状況にあった。
16 中国の大学は、9月入学で6、7月卒業が一般的である。