第29章
恋渡る騎士殿の苦行をやめさせ、
山を下りるようにし向ける工夫、
愉快なり。
でも父母は、わたしが身をもちくずしたと思い込んでいます。それを考えると合わす顔がありません。
「ルシンダが、あの人の妻ですと言った、その、ついていない、あの人が僕だよ。運に見放されたカルデニオさ。……こうして君と会えたんだから、幸運だ。君の言うことが本当なら、本当に決まっているけれど、僕たちは二人ともなんとかなる。どん底かと思ったら、そうでもない。目の前が明るくなってきた。…」
殿様は胴着一枚の裸同然…痩せこけ、顔は黄ばみ、空きっ腹で死にそうなのだからドウルシネア様を思って溜息吐息に暮れている。…だから、みなさんで殿様を山から下ろす手を考えて下さい、とサンチョは訴えた。…とにかく連れて帰りたい、と説明すると、ドロテアが話に乗った。救いを求める娘の役は自分がやる、…必要とあれば何でも演じるから、お任せをと申し出た。…