2.会計基準の追加と改訂
( 1) 背 景と概 要
今回、新規追加並びに改訂されたのは、上記の新企業 会計準則の中で、テーマごとの個別具体的な会計基準を定めた「具体準則」についてです。
新企業会計準則が公布さ れた 0 6 年から一定の 年月が 経 過しており、頻 繁に改 訂や 追加を行っている IFRSとの間に相当程度の乖離が生じて いることが背景にあります
従 来 こ の「 具 体 準 則 」 は 3 8 項 目 で し た が 、 1 4 年 1 月 か ら 3 月の間という短期間の間に、3 つの追加と 4 つの改訂 が行われ、その結果、14 年 3 月 31日現在、新企業会計 準則は合計 41 項目となっています(表 1)。
なお、今回、追加・改訂した項目についてはすべて 14 年 7 月から適 用することが求められます。
(2)注目すべき改訂ポイント
今回の具体準則の改訂内容について、日系の中国子会社 に大きく影響すると思われる注目すべきポイントを 3 つに絞 って、以下解説いたします。
第 1 に、新企業会計準則 30 号【改訂】
財務諸表の表示 において、従来の損益計算書に代わって包括利益計算書の 様式が取り入れられた点です。
この改訂により、新企業会 計準 則を 適 用している中 国子会社の表示が IFRS や日本の連結財務諸表 と歩調が合うようになり ました。
第 2 に、新 企業会計 準 則 第 9 号【 改 訂 】
従 業 員 給 与 報 酬 で、 退 職 給付制度に関する会計 処理や注記等の開示に 関する規定が定められた ことです。
中国において、 毎期一定額を基金に拠出 する確定拠出型の企業 年金 制度がありますが、 こういった 退 職 給 付 制 度 に関する会計処理を個 別・具体的に定めた規 定は存在しませんでした。
今回の改訂では IFRS の考え方を全 面的に取り入れ、確定拠出型制度と確定給付型制度の両方 をカバーした基準が導入されました。
また、本改訂では有給休暇引当金の会計処理についても 追 加されています。
第 3 に、新企業会計準則第 33 号【改訂】
連結財務諸表 において、連結財務の免除規定が採用されなかったことで す。
公開草案の段階では、国有企業や上場企業、金融機 関等は連結財務諸表を作成が要請される一方で、それ以 外の非上場会社等に対する連結財務諸表作成の免除規定 が追加され、中国に中間持株会社を有する日系企業にお いては大きな関心事でした。
しかし、今回正式に公表され た改訂版では、当該免除規定は採用されず、従来どおり、 子会社を有する会社は連結財務諸表を作成することが要 請されます。
(3)今後の改 訂見 通し
14 年 3 月末時点の中国財政部のホームページを見ると、新企業会計準則の以下の「具体準則」が公開草案として開 示されていますが、近い将来正式に確定するものと思われ ます。
・「企業会計準則第 37 号―金融商品の表示(改訂)」(公開 草案)
・「企業結合準則補充規定−共通支配下における子会社に 関連する会計処理」(公開草案)」
10 年に中国の財政部は「中国企業会計準則と IFRS のコ ンバージェンスのためのロードマップ」を公表しており、中 国の会計基準を IFRS と同質化させることの方針を明確化し ています。
そのため、今後も「具体準則」をはじめ、新企 業会計準則は、IFRS の動きに呼応する形で引き続き改訂 されていくものと考えられます。
その一方で、旧企業会計 準則体系の「企業会計制度」の改訂は行われていません。
そういう意味では、中国の会計制度は中長期的には新企業 会計準則に一本化されてゆくものと考えられます。
出所
有限責任あずさ監査法人
6月号 中国ビジネス Q&A