第21章
マンブリーノの兜をめぐる大冒険。
その斯々たる戦果。
次いで、常勝の騎士殿が
遭遇する椿事あれこれ。
閉ざされる門あれば開かれる門あり。
サンチョ
「たとえば、どこかの皇帝か、偉い君主様に仕官してはどうでしょう。皇帝が目下戦争をしているなら、それこそ腕の見せどころ、殿様がどれほどお強く賢明であられるかを、遺憾なく見せる絶好の機会です。抱え主の目に留まって、天晴(あっぱ)れなるぞ、となって、それ相応の報いにありつく。そうなれば、殿様のご活躍振りを本にしたい、ぜひ書きたい、という者が現れないわけがなく、殿様の名声は、いつまでもいつまでも人々の記憶に残ることになるわけであります」
「良いのであるが」とドン・キホーテ。「そこまで達するにはまず諸国を回らねばならん。人に認められるため冒険のあるところへ駆けつけ、試練を積むのだ。そのうち、人に知られる者となり、名が広まって……紋所と盾の図柄はあの騎士のもの、……さあ、騎士道の華と謳われるお方に阻喪(そそう)があってはならじ、…妃の側には姫。これが地上を隈なく探しても滅多にお目にかからぬ完璧な美女。…そのまま、文目(あやめ)も分かぬ恋の網………」
「そうなくっちゃ。…窶れ顔の騎士という立派なお名は誰が付けて差し上げたか、はっきり覚えておいて下さいよ」