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移転価格と寄附金

2014年06月02日 (月) 11:42
移転価格と寄附金

【事例1】
弊社のグループは主に自動車の製造、販売を事業としており、現在、電気自動車を製造している中国子会社からA電気自動車を1台当たり3万円(円建て)で輸入しています。
しかし、昨年から円安の進行、資材相場の高騰及び老賃のベースアップに配慮して、仕入価格を4万円に引き上げて輸入することとなりました。この場合に、移転価格税制の対象とされて移転価格課税が行われる恐れはないでしょうか?

【事例2】
弊社は自動車メーカーでありますが、今年のはじめにインドに販売子会社を設立するとともに、100億円の融資をしました。融資期間は10年で金利年2%で貸すことにしております。この場合に、受取利子が移転価格課税の対象とされて移転価格課税が行われる恐れはないでしょうか?

【回答】

両事業法人とも国外関連会社でありますので、移転価格課税だけでなく、寄附金課税もあり得ますので注意が必要です。

寄附金課税されますと移転価格課税と異なり相互協議が行われず、納税の猶予制度を適用することもできません。

平成24年5月の新聞報道によりますと、パナソニックが税務調査を受けて、子会社支援のための価格引き下げを、移転価格課税ではなく寄附金課税で否認されております。

実質的な贈与か対価のない無償取引部分が含まれていれば寄附金課税、それ以外であれば移転価格課税ということになります。

☆寄附金課税が行われる類型として次のようなものがあげられます。

1.国外関連者への無償の資産の販売等
(資産の販売、役務提供、無償貸付)
国外関連者へ資産の販売等をしながら、その対価を受け取らなかったり、過少な対価を受け取っている場合などです。

内国法人
↓ 資産、貸付、役務
↑ ※対価ナシ又は過少な対価!!
国外関連者

2.国外関連者へ架空経費の計上
国外関連者へ実態のない市場調査費や外注費等の事業費用を支払うような場合です。

内国法人
↓ 対価
↑ ※役務ナシ又は過少な役務!!
国外関連者

3.国外関連者への過大な対価の支払い
国外関連者から資産を購入、借入、役務の提供を受け、その対価が過大な場合です。

内国法人
↑ 資産、貸付、役務
↓ ※過大な対価!!
国外関連者

4.国外関連者が負担すべき費用
損失の負担
本来であれば、出向元である国外関連者が負担すべき出向社員の給与を負担したり、国外関連者が支払うべき損害賠償金を負担したりするような場合です。

被害者
-----------------------------------------
↓ 損害賠償請求 ↑
国外関連者:加害者
         ↑ 
-----------------------------------------
内国法人  ※損害賠償金

☆なお、子会社等を再建する場合の無利息貸付等(基本通達9-4-2)の相当な理由があるときは、措特法66-4-3の国外関連者への寄附金の損金不算入の規定の適用はありません。(事務運営指針2/19(注))

以上のように、法人税法第37条第7項、8項の寄附金の損金不算入の規定が、そのまま措特法第66条の4第3項の国外関連者に対する寄附金の損金不算入の規定に適用されていることがわかります。

「移転価格事務運営要領(事務運営指針)」では、役務提供を受けて、支払う対価が相当であるか否かについては次のように検討するとしています。

まず、国外関連者から経営・財務・業務・事務管理等の役務の提供を受け、それ相当の対価を支払ったというのであれば、それを証明する役務の内容等が記載された書類等の提示又は提出を求め、当該書類等の検査を行うこととされています。
(事務運営指針2-9(5))

その結果、具体的な計算根拠等の確認ができない場合には、寄附金の検討がなされるとしています。

逆に、役務提供契約が締結されているのに、相当の理由なく収受しない場合には寄附金課税をし、役務提供契約を締結していない場合には、移転価格課税が検討されるとしています。

要するに、互いに合意した取引価格がありながら、それと異なる価格で取引されれば寄附金課税が行われるのは当然であり、親会社がそのような契約の締結のないところで、全体の納税額にも配慮して取引価格を操作したのですから、独立企業間価格(時価)と移転価格との差額に移転価格課税が行われます。

例えば、独立企業間価格が100、移転価格が120、実際の取引価格が150とすれば、次のようになります。


実際の取引価格 150

 ※寄附金課税 30

移転価格 120

 ※移転価格 20

独立企業間価格(時価) 100

さらに内国法人が価格調整金を支出して、既に行われた国外関連者との取引に係る対価の額を後で変更した場合には、その取引価格の修正に「経済的合理性」があるかが問題となります。
もし経済的合理性がなければ寄附金課税が適用されることになります。
具体的には、支払又は費用に計上した理由、事前取り決めの内容、算定の方法、計算根拠、その支払等の決定日、支払をした日等を総合的に勘案して検討されることになります。(事務運営指針2-20)


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