五一 にせものの宿太尉、華州の太守を殺す
魯智深は賀太守をにらんでわめきちらした。
「この悪役人め、よくも拙者をつかまえやがったな! おれは死んでも史進といっしょなら満足だ。だがな、おれが死んだら、宋公明あにきが黙っちゃいないぞ、あとで後悔するな!」
五二 晁蓋(ちょうがい)、史文恭(しぶんきょう)の毒矢にあたって討死する
梁山泊をふみかため
晁蓋めをばつかまえて
及時雨 智多星いけどって
鉄の車で東京(みやこ)に送り
天下に知らしょう
曾家(そうけ)五虎(ごけ)の名
「これは不吉のしるしですから、日をあらためて出陣せられたがよい」
と呉用もいうし、宋江も、
「えんぎでもないから、しばらく見合わせられたら」
と口をすっぱくしていさめたけれども、晁蓋は聞かず、川を渡ってしまった。
林冲がこれをいさめて、
「どうもあやしい。信用しちゃいけませんぞ」といったが、晁蓋はどうしても聞かなかった。
五三 呉用、計略をもって盧俊義を梁山泊にさそい出す
呉用は顔色をかえた。
「この世はおべっか使いが喜ばれ、忠言は耳にさからう……いや、やむをえません。ではごめん」
蘆花(ろか)叢裏(そうり)の一扁舟(へんしゅう
)
俊傑(しゅんけつ)にわかに北地より遊ぶ
義士もしよくこのうちに留(とど)まらば
反って身は難を逃れて憂なからん
慷慨(こうがい)北京(ほっけい)の虜俊義
遠く貨物を駄して郷地を離る
一心ただ強人を捉えんと要(ほっ)す
かの時まさに男児の志を表さん
虜俊義は足をとどめ、天を仰いで思わずさけんだ。
「人のいさめを聞かなかったばかりに、とうとうこのわざわいをこうむった!」
へさきに竿をもって立った丸はだかの男は、歌った。
「学問なぞはくそくらえ
おらがねぐらは梁山泊よ
わなを仕掛けて虎をとり
わなを仕掛けて鯨をとり
餌をたらして鯨とる」
虜俊義はギョッとして、声も出なかった。