55 トルストイ農場
私たちの考えは、農場を忙しい勤労の場にすることであった。こうして金を節約し、そして終わりには、家族を自活させることであった。この目標が達成されたならば、私たちは、無期限にトランスヴァール政府と闘うことができるはずだった。
56 婦人も闘争に参加
ところが今回、南アフリカ政府によって採択された判定によって、キリスト教の儀式に従って挙式されなかった結婚や、結婚登録係に登録されていない結婚はすべて無効となったのである。
57 労働者の流れ
ところがだれひとり、この自由を行使しようとする者はいなかった。私たちは、脚の不自由な者は鉄道で送ることを決定した。そして、からだの健全な者は全部、歩いてチャールスタウンまで行こう、と決意を表明した。
58 大行進
最後に、わたしは政府に対して、もし政府が三ポンド税を廃止すれば、ストライキを中止し、契約労働者は仕事に復帰する、と約束する。
しかし、まだわたしが巡査と話を続けているうちに突然、巡礼者たちが突進して、州境を越えてしまった。巡査たちは、彼らを包囲した。しかし押し寄せる多勢を押さえるのは、たやすいことではなかった。巡査たちには、わたしたちを逮捕する意向はなかった。
「わたしは貴下の逮捕状を持参してまいりました。貴下を逮捕します」
「いつ?」
「今です」
そこで彼は、五十ポンドの保釈金支払いで、わたしを保釈した。
私たちは行進を続けた。しかし、わたしを自由に放置しておく気は、政府になかった。…再逮捕された。
「貴下を逮捕する」
「わたしは昇進したとみえますね。ただの警察官の代わりに、わたしの逮捕に治安判事さまじきじきのお出ましですからね。さあ、あなたは、今すぐわたしを裁判してください」
「わたしといっしょに来たまえ。法廷はまだ開廷中だから」
そしてまた、わたしは五十ポンドの保釈金で釈放された。
「私は、貴下を逮捕します」
こうしてわたしは、四日間に三回逮捕された。わたしは尋ねた。
「行進者はどうなるのですか」
「私たちが送ります」
「貴下は、今は囚人であるから、演説はいっさいいかん」
59 サッテイヤーグラハの勝利
スマッツ将軍の秘書の一人は、おどけて言った。
「わたしは、あなたがたの民族がきらいだし、助けようなどとは、金輪際思っていない。しかし、いったいわたしはどうしたらいいのか? あなたたちは、私たちが困っているときに助けてくれている。そのあなたたちに、どうして手を振りあげられようか。…ところがあななたたちときたら、敵でも痛めつけない。あなたたちは、、自己受難だけで勝利を納めようとしている。…」
政府は連邦公報の紙上に、三ポンド税を廃止し、インドで合法と認められている結婚はすべて合法とし、親指の指紋が押されている居住証明書をもって連邦入国権の十分な証拠とすることを規定した、インド人救済法案を公表した。
60 わたしの大戦参加
戦争への参加が非刹生(アヒンサ)とけっして両立するものでないことは、わたしには全く明らかであった。しかし、人間の義務については必ずしも人々に明らかにはなっていないのである。