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陳平

2014年01月03日 (金) 11:43
陳平

項羽と劉邦(中)

◎劉邦の遁走
ーー馬というのは人のために運ぶか駈(か)けるということだけでこの世にいる。

「あんな欲深のどこがいいんだか」
嫺嫺(かんかん)はいった。
「欲が深いからあの人は頼もしいんだ。無欲だとすれば単なる隠者じゃないか」
嬰(えい)は、役所がひまなときは、役所の馬車に劉邦をのせた。一種の汚職だった。

呂氏、名は雉(ち)、字は娥枸(がく)、いうまでもなく劉邦の妻である。

呂氏にとっておそろしい者は、嫂だけであった。
(いつか、仕返しをしてやる)

◎漢王の使者
項羽はひとたび自分の配下になった者に対しては肉親のように愛するが、裏切るか、あるいは無縁の者に対してはどんな残虐なことでもやった。

(黥布は、なしがたいことをやった男だ)
(人として、まちがってはいないか)
(まあ、いいだろう。劉邦を勝たせるためには虎狼(ころう)とでも手をにぎらねばならぬ)

◎陳平の毒
(どうせ馬鹿だろうが、ただ馬鹿にするとひどい目にあいそうだ)
(結局は、わしの配下はろくでなしなのだ)
あの項羽に勝てるかということを思うと、とうてい自信がなかった。
(たれか、いないか)

「なんといってもあいつは嫂を盗したような男だ」
灌嬰「…陛下の窮状を救うのに、尋常の智、尋常の勇ではどうにもなりません。奇正応変の才ある者として陳平を推したのでございます」
(もっともだ)

(これでおしまいか)

「項羽という御人は、人を信じるということができませぬ。項羽が信任し、寵愛する者は、項羽一族とその妻の兄弟のみでございます」

(わしが、項羽に勝てるはずがない)

劉邦「私は螢陽から西を漢の領土にしよう。天下は大王よ、あなたのものだ」
項羽「和睦は、ならぬのだ」
劉邦「では、大王からの御使者を螢陽にお送りくださって漢王自信にそのお言葉をお伝えねがう、というわけに参りますまいか」
陳平の策であった。
(もっともなことだ)
つまりは、項羽も范増も、陳平の遠謀にかかった。

「毒を用います」

項羽その人に、かれの配下の諸将の忠誠心を疑わせるのである。

「しかし項羽にも疾(やま)いがございます」
「猜疑心」
「陳平よ、もう教えてくれてもよかろう。工作とは、なにをやっているのだ」
楚軍における傑出した四人の将軍が、漢の常識では信じられないようなことだが、実質的な行賞をうけていない。
「あの四人が」
「あわれなことだ」

「なんだ、諸君は項王の使いか。私は范増老人がよこした御使者であるかとおもった」

項羽は、はたして范増を疑った。

「私が大王のために御役に立つことはもはや終わったようにおもいます。あとは大王みずからで十分治めることができましょう」

かれはほどなく死んだ。

◎紀信の悪口癖
劉邦「腹が減ると女が欲しくなるのはどういうわけか」
「天がそのようになさるのでしょう」

かれは項羽とちがって自分の血縁を重用せず、また他人をそのうまれ故郷によって軽重するということをしなかったために、天下の士が玉石ともにーー玉はすくいながらーーこの男のもとに安んじてあつまってきたにちがいない。

「大王は、とても楚の項羽には勝てますまい」
「まことに、わしは項羽にはかなわない」
「この螢陽城もいずれは陥(お)ちましょう」「なさけないが、どういうことだ」
「籠城は将来に成算があってやることです。陛下にご成算がありますか」
「ない」


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