Contents
RSS 2.0

ブログ blog page

我が望みは汝のうちに

2013年11月16日 (土) 19:07
我が望みは汝のうちに

世界の良書 心に残る一句
神曲/ダンテ

「煉獄篇」 続き

「おお神に選ばれた君たち、
正義の呵責を受けている
君たちには希望がある、
苦悩も和らぐだろう
次の石段へ私たちを導いてくれないか」

天が私らを腹這いにさせた理由は
…私がピエトロの後継者だったということだ、

泥を塗るまいと気にかけると、
〔法王の〕法衣がいかに
重いものであるか私は一か月余り
身にしみて感じた。

だがそれでもローマ法王に選ばれた時
嘘偽りの人生の正体を私は見破った。
一旦その地位につくと
心に落ち着きが得られず、
現世ではこれ以上は上へ
進めないことが自覚された。
すると私の心中で永生への
愛が燃え上がった。
その時までの私は、
神と縁のない、およそ惨めな、
貪欲の魂のような魂だった。

「幸なるかな義を求め義に渇く者は」

「心の清き者は、幸なり」
「この火に咬(か)まれぬうちは、
先へいくことはならぬ。
聖(きよ)き魂たちよ、この中に入れ。
彼方から響きわたる歌声に耳を傾けよ」

息子よ、
これは苦痛であるかもしれぬ。
しかし死にはせぬ。

さあ心配はよせ、いっさいの危惧の念は捨てろ、
こちらを向き、安心して先へ進め

「いいか、息子よ、
これがベアトリーチェとお前の
壁だの壁なのだぞ」

優しい父は、私を力づけるために
しきりとベアトリーチェのことを話ながら進んだ、
「もう彼女の眼が見えてくるような気がする」

「来たれ、わが父に恵まるる者よ」

若い美しい女が
私の夢裡(むり)に現われて
花を摘み、歌いつつ語りつつ
野辺を行くのが、
目(ま)のあたりに見えるような気がした
「レアでございます」

「世の中の人々が苦労して
方々の枝に探し求めた
あの甘い樹(こ)の果(み)、
それが今日こそ
お前の飢えをいやしてくれるだろう」

「永遠の劫火(ごうか)と一時の劫火を、
息子よ、お前は見た。
そしておまえが着いた
この地はもはや私の力では
分別のつかぬ処だ。
私はここまでおまえを智と才でもって
連れてきたが、これから先は
おまえの喜びを先達とするがよい。
峻厳な、狭愛(きょうあい)な道の外へ
おまえはすでに出たのだ。
正面に輝くかなたの太陽を見ろ、
草花や樹々(きぎ)を見ろ、
ここではすべてが
大地からおのずと生えている。
涙を流しておまえを連れて来るように
私に命ぜられた
美しい喜ばしい目をした方が見えるまでは、
……

マタリダ夫人
「なぜおまえは輝きの
外面にだけ気を取られて、
後に続くものに目を向けないのですか?」

「汝は幸なり、
汝の美はとこしへに幸なり」

「主よ、我が望みは汝のうちにあり」

レテ川に浸る
美しい夫人は両の手をひろげ
私の頭を抱くと、私を水の中に浸した。
私は思わず水を飲んだ。
飲まずにはいられなかった。

第三十三歌

「おお光よ、おお人類の栄えよ、
これは何の水でしょうか?
こちらへ一つの泉から
溢れだして、
たがいに右左へ別れて行きますが?」

私は新緑の木の葉を新しくつけた
若木のような清新な姿となって、
聖(きよ)く尊い波の間から戻って来、
星々をさして昇ろうとしていた。


トラックバック

トラックバックURI:

コメント

名前: 

ホームページ:

コメント:

画像認証: