ポイント
●日本には米中双方の意見、価値観、立場、国益を汲み取りながら、二つの要素を共存させる歴史的責務がある。
●日本の戦略は、いかに米中の橋渡し役になるかということ。
●ぜひ、一人でも多くの日本の若者が中国や米国に行って、同世代と触れ合い、自分はどうすべきか、という課題に向き合ってほしい。
潮2013年12月号
フリーコラムニスト 加藤嘉一氏
(かとう よしかず)
1984年生。北京大学留学。同大学院卒。
現在ハーバード大学アジアセンターフェロー
●日本は米中の橋渡し役に
今回の米中の首脳会談で、習氏の側から「米中は新しいタイプの大国関係を構築できる」と提起した。
「新しい大国関係」の意味には二つのポイントがある。
一つは、冷戦時代の米ソのような核武装を競い合ってゼロサムでぶつかるような関係はやめようということ。
このことについては、両国の首脳共にコンセンサスができていると言ってよい。
その一方で、ドミナントパワー(既存の大国)とエマージングパワー(台頭する大国)である米中は、「戦略的相互不信」とでもいうべき緊張関係を抱えている。
米国側には、中国は既存の世界秩序を変えようとしている“ゲーム・チェンジャー”ではないかという疑念がある。
中国側には、米国がかつての対ソ戦略のように中国を封じ込めようとしているのではないかという不信感がある。
安部政権が志向する憲法改正や集団的自衛権は、中国はもとより米国からも日本の右傾化が懸念されている。
その要因の一つは、日本の対外発信力が弱い点。もう一つは、米国にとってこれらは”中国問題“だからなのだ。
米中両国は、双方の関係の中で日本を扱っている。だからこそこれからの日本もまた、「日米中」の視点に立つほかはない。
米中は互いに大人の振る舞いをしている一方で、大国同士のゆえに長期間には摩擦を抱える潜在力がある。そこでいかに“漁夫の利”を得ていくかが日本の戦略になると思う。
それは換言すれば、いかに米中の橋渡し役になるかということになるのだ。
●日本には歴史的責務がある
日本はアジアで最初に民主主義国家となり先進国となった国であり、米国の同盟国であり、他方で中国と似た文化を持ち、漢字が読める。
つまり米中双方の意見、価値観、立場、国益を汲み取りながら、二つの要素を戦略的に共存させるルール・メイキングをしていく歴史的な責務がある。
そのためにも重要なのが国際社会における日本の「信用力」。少なくともトラブルメーカーのような印象を国際社会に与えることは避けなければならない。
たとえば、2020年の東京五輪開催は、経済的・外交的に何をしていくのかを、オール・ジャパンで考えていく絶好の機会である。
●一人でも多くの日本の若者が米中へ
先般、中国語を学んでいるというハーバードの学部生の寮を訪ねてみると、まだ中国語を勉強して二年ほどの彼ら彼女らが、「中国語で話そう」と私に挑んできた。
その語学力は米中関係を真剣に議論できるレベルで、私はショックを受けた。
日本では直面しにくいシーンだったからだ。
英語と中国語の両方を使いこなせる日本の若者がどれほど育っているだろうか。
たとえば私が住んでいる周囲でさえ、日本語と英語をほぼ完璧に話す中国人は結構いる。
(注)これは私も同じ感想!!
国際政治学者であるイアン・ブレイマー氏は、今はG1でもG2でもG2でもなく、“G0”の時代と主張する。
中東情勢などを見ると、米国もそう簡単に自由や民主主義の価値を浸透させられる状況ではない。
他方の中国も、彼らの主義や国家体制を新興国に輸出できるとは思えない。
ある意味ではグローバル・リーダーシップなき時代が、これから10年、20年は続くのかもしれない。
そうした時代の中で、米中とどう向かい合うのか。個性を持った、枠からはみ出すような日本の若者をどう育てていけるのか。
中国にも米国にも、失敗を許容し、励まし、できる人間を持ち上げていく風土があるが、日本にはそういう新しい人間の台頭を排除するような文化がある。
ぜひ、一人でも多くの日本の若者が中国や米国に行って、同世代と触れ合い、自分はどうすべきか、という課題に向き合ってほしいと願う。
感想
日本一国という視点ではなく、世界の平和に貢献できる、世界市民…との思いを強くする。
フィリピン独立の父ホセ・リサール
「人間はすべて世界市民になる」
今日はたまたま運輸会社の社長との原油価格の話題から、日本はイランとも仲がいいという話しになった。中東問題も日本の平和外交がカギとなりそうだ。
本当に小さな小さな存在だけど、「置日」を少しでも前進させていくことが、世界の平和に貢献できることを思うと、本当に嬉しい!
どんな困難も前進の糧にしていこう(^_^)v