劉静静さん
お疲れ様
中国での外貨送金の手続きが少し簡素化されていると、日本の国際税務の月刊誌に載っていました。日系企業にとって悩みの種であるようですので、実際はどうなのか、少し調べてみて頂けませんか?
月刊誌の記事の要約を以下にまとめてみました。
(月刊国際税務2013年11月号)
「サービス貿易等項目の対外支払にかかる税務届出関連問題の告知」(国家税務総局、国家外貨管理局告知2013年40号)
「サービス貿易外貨管理法規に関する通達」(国家外貨管理局:准発2013年30号)
※准…匡←この三辺の囲いの中に、さんずいへんの准…日本語にない漢字
従来
「一回3万米ドル」を超える海外送金では「納税・免税証明」の提出
↓
改正(2013年9月1日以降)
「一回5万米ドル」を超える海外送金では主管国税機関が発行する「サービス貿易項目対外支払税務届出表」を提出
当該第40号告知の重要な変更点は税務局への事前の届出が不要な上限額が
「一回3万米ドル」以下
(1ドル100円として300万円以下)
↓
「一回5万米ドル」以下
(同500万円以下)
に緩和された。
あわせて、外貨送金の際にこれまで必要だった税務証明書の提出が不要になった。
一回5万米ドルを超える送金では、「税務届出表」(こんなものがあるの?あればその見本も見せて!)を税務局へ提出し、税務局から捺印をもらい、送金の際に銀行に提出。
税務局は届出に対する事前審査を行わず、後日「15日業務日以内に事前審査」を行うものと規定されている。
当該告知に従い、5万米ドル以下の海外送金は税務局への届出が不要となり、送金窓口となる銀行も特に不審な点がなければ送金業務を受け付けているようだ。
送金手続きの簡素化は喜ばしいものの、管理の緩和を意味するものではない。「税務届出表」の提出後、源泉徴収が必要な対価、例えば本社技術者の中国出張による役務提供などでは、会社が自ら税務申告しなければならないのは言うまでもない。5万ドル以下の送金に際しても、「税務届出表」の届出の「免除」は「免税」を意味するものではない。
当該40号告知では以下の中国国外で発生した費用などの支払は、支払額が5万ドルを超えても、税務局への届出が不要となると規定されている。
具体的に十五項目あるが、以下に重要な項目のみ記載する。
一、域内機関(中国国内企業、機関など)の域外(海外)で発生した旅行、会議、商品展示等の費用
ニ、域内機関の域外機関(支店など)で生じる事務所経費、域内機関が域外で請け負う工事の下請け業者への支払など。
三、域内機関の域外で発生した輸出貿易コミッション、保険料、賠償金など
四、保険項目に該当する保険料、保険金などの関連費用
では、日本本社が立て替えている以下の、中国現地法人が負担すべき費用の送金は可能になったのか。
□現地法人の従業員の出張旅費
□PL保険など日本本社がグレーバルで一括して契約している保険料の中国負担分
□本社管理のメールサーバー、ソフトウェアなどの管理費用の配賦。
上記の立替費用なでが直ちに当該規定に当てはまるか否かは、まだ実務上の取扱いが定まっておらず、本社「立替金」として送金するのは要注意。
海外送金に関わる銀行での手続きが簡素化され、税務局の事前審査が不要になった背景には、会社が規定に基づき申告納税を自主的に行うことを奨励していることがあげられる。
つまり、送金事務が簡素化された反面、企業自身の内部管理を強化し、申告納税漏れを防止する、統制手続の徹底が必要である。
送金項目の課税・非課税判定を今一度見直してみるこてをお勧めします。
写真は三国志の舞台「五丈原」